詳細な全球地形データが登場か

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今回はリモートセンシングに関するマニアックな話です。

地球の凹凸全部見せます ネット公開 経産省とNASA (asahi.com)
http://www.asahi.com/science/update/0809/TKY200708090410.html

経済産業省と米航空宇宙局(NASA)は08年12月、人工衛星から撮影した全地球の3次元地形データを無償で公開する。測量ができない地域の詳細な地形図作りや、火山や土石流など自然災害の被害予測にも使える。全地球的なデータを公開するのは世界初。10日、日本列島だけの試用版をインターネットで公開する。

 公開するのは、全地球の30メートル四方ごとの標高データ。NASAの人工衛星テラに搭載され、経産省が開発した地球観測センサー「ASTER」が赤外線で撮影した。

 地球上のどの地点のどの方向からも鳥瞰図(ちょうかんず)を作ることができる。フリーソフトを使ってデータを加工し、鳥の目や飛行機からみたような動画も作れるから、パソコン上で地球上のどこでも遊覧飛行ができる。

 地形の傾斜など細かいデータがわかるため、溶岩や土石流などが流れる範囲や時間などが正確にわかり、ハザードマップの作製に使える。軍事用にはさらに細かいデータが必要で、利用には適さないという。

 これまで、スペースシャトルが撮影したデータが公開され、検索サイトグーグルなどで見ることができる。だが、北緯60度から南緯56度の範囲でデータが欠落している部分もあった。今回は、欠落はなく9倍細かい。

 経産省宇宙産業室は「世界中のだれもが無料で利用することで、日本の宇宙産業技術のすぐれた部分を世界中に広く知ってもらいたい」としている。今年11月に、南アフリカのケープタウンで開かれる、地球観測サミットで計画を発表することにしている。

 試用版の公開は、ASTER全球3次元地形データのウェブサイトで。

その,ウェブサイトはこちら。

G-DEM Project (ERSDAC)
http://202.32.29.90/J/index.html

ASTERは経済産業省の衛星センサーで,NASAが打ち上げたTerraという衛星プラットフォームに搭載されている。1999年に打ち上げられ,2000年の観測開始以来,7年近く観測を続けている。このASTERが撮りためたデータを使って,地形データ(Digital Elevetion Model; DEM)を作成し,公開するということである。

全世界に近い範囲(Near-Global)で,均質な地形データは,現在のところ2種類公開されている。それが,G-DEMのサイトにまとめられている。

他のGlobal DEMとの比較(ページ下部の表)
http://202.32.29.90/J/2.html

GTOPO30は,いろいろな機関が過去に作成したデータを張り合わせたものであり,1000m(30-arc)の解像度である。ただし,データソースが複数であるため,精度が一様ではない。また,場所によってはタイル状のエラーが見受けられる。(最近,このGTOPO30はアップデートされ,下記に紹介するSRTMもデータソースとして使うようになった。)

SRTMはリモートセンシングによって取得されたものである。スペースシャトル「エンデバー」(確か毛利氏が乗っていたはず)が2000年2月に取得したデータである。

そして,今回新たに登場予定のASTERが作成したG-DEMについても,リモートセンシング技術を基に取得されたデータである。ただし,SRTMとG-DEMは同じリモートセンシング技術であっても,取得方法としては大きく異なっている。

大きな違いの1つは,使用する電磁波の種類とセンシングの方法の違いである。

SRTMは,電磁波の種類の中でも波長が長いマイクロ波を使った技術である。マイクロ波は雲による影響を受けないため,全天候型である。また,マイクロ波をセンサから自ら発してセンシングし,受信するため,昼夜関係なく取得できる。そのため,スペースシャトルのミッション程度の短期間でデータを取得することが可能だ。

一方,G-DEMは立体(ステレオ)視と同じ原理で地形データは取得される。この場合,波長帯は可視光や近赤外を使っており,太陽光が地面を反射してセンサに戻ってくる光を受信する。そのため,雲の影響を受けてしまう。もちろん夜は暗いため,撮影しても使うことができない。従って,G-DEMは長期間にわたって撮影した昼のデータを用い,さらに雲の無い場所を取り除いてはじめて完成する。

2つ目の違いは,撮影範囲である。

SRTMの場合,プラットフォームであるスペースシャトルの観測範囲に制限あるため,極付近は取得できていない。一方,G-DEMのASTERを搭載したTerraは,極軌道衛星であることから,極に近い部分が撮影可能である。SRTMでカバーできない範囲を整備可能というのは,G-DEMの強みといえる。

さて,G-DEMのサイトで,メリットとして挙げていた空間解像度については,そんなにメリットとは言えない。SRTMは空間解像度が90mとしているが,アメリカ国内では30mで公開されている。実は,SRTMは30mの空間解像度も可能なのだ。つまり,空間解像度の値としては,G-DEMとSRTMはそれほど差がない。

標高値の精度については,G-DEMのサイトではSRTMは10m,G-DEMは7mとしており,G-DEMの方が上であるとしている。最近の報告ではSRTMでは10m以下の精度であることが報告されており,G-DEMはSRTMと比較して,精度的にはそれほど違いはないだろう。(ただし,空間解像度の違いによって値が変わるので,厳密な比較は難しい。また,SRTMは実測された事後的な精度検証結果であることから,G-DEMのデータが実際に登場してから同じ方法で比較した上で論ずるべきであろう)。

SRTMの欠落域の問題については,G-DEMに分がありそうだ。SRTMの観測(というより合成開口レーダの観測)は,真下の観測ではなく,センサを横に向かせて観測している(SRTMの場合は進行方向の左側)。そのため,地形が急峻な場所では,遮蔽された向こう側が見えない,という場合があり得る。一方,G-DEMを作成するASTERの場合は,真下から見下ろしたデータと斜めのデータを用いるので,地形が急峻で遮蔽されてしまう可能性は少ない。

というわけで,G-DEMの最大のメリットは高緯度も取得できること,データの欠落が少ない,の2つである。反対に気になる点は,使用するデータの量や処理が膨大である点が挙げられる。

データの量や処理が膨大であることについては,大きな入れ物が用意されている。

産総研 Geo Grid
http://www.geogrid.org/

さて,話は変わるが,リモートセンシングで地形を観測すると言っているが,陸地の多くは樹木などの植生に覆われており,市街地では建築物に覆われているため,実際には地面が見えていない場合が多い。その場合,リモートセンシングで本当の地形(つまり地盤の標高値)を取得できるのか,という疑問が出てくるだろう。そして,答えは「No」である。現実には,地面にさらに上物である地物が含まれた値なのである。ただし,ほとんどの場所の地物高は10m~30m程度であるため,誤差に含まれてしまうことが多く,無視されているのである。研究レベルでは,こういうデータから樹木の高さを計測することが試みられている。30m程度の解像度で鉛直精度10m以下となると,地物高が無視できなくなる可能性がある。

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このページは、tagchanが2007年8月22日 14:39に書いたブログ記事です。

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