2008年1月アーカイブ

京都議定書において,日本は1990年から6%の温室効果ガスの削減目標が設定されている。そのうち,森林管理によって,最大で3.9%が削減量としてカウントすることができる。つまり,1990年から温室効果ガスが増加していないと仮定し,森林管理によって3.9%の削減量が認められてカウントされた場合,他の削減量は2.1%で済む計算となる。実際には,全体では1990年から増加しているので,削減量は2.1%どころではないのだが,森林管理(林業+天然生林の保護・保全措置)による最大の3.9%の削減量は確実に達成しようと,政府は躍起になっている。

しかし,現状では2005年度までの試算では,議定書のルールに基づいた場合は吸収量は2.8%にとどまっている(参考:環境省中央環境審議会地球環境部会 第5回懇談会資料「森林吸収源対策について」)。認められる最大値である3.9%に近づくために,森林管理として人工林における間伐を追加的に実施する。そうすることで,京都議定書における森林管理の面積に含めることができるのだ。このような背景が,下記記事の間伐促進の背景である。

また,上記資料によると,120万ヘクタールの追加の間伐が必要らしい。120万ヘクタールは,東京都の面積の約6倍に相当する。広大な面積を,国の補助として間伐を行うことになる。

「 間伐促進で市町村に交付金 温暖化防止で特措法案」東京新聞

林野庁は29日、地球温暖化防止対策として森林の間伐事業を促進する特別措置法案をまとめた。農相が定める基本指針に基づいて、間伐事業に取り組む計画を作成した市町村に対し、国が事業費の一部を直接補助する交付金制度の創設を盛り込んだ。

 間伐事業に対する国の補助金は、都道府県を通じて配分されているが、京都議定書の森林吸収量の目標達成に向けて毎年20万ヘクタールの追加的な間伐が必要なことから、直接補助により市町村主体の取り組みを促す。

 特措法案に基づく交付金は、過去の実績を上回る追加的な間伐事業について、経費の半額を国が負担する。2012年度までの時限措置で、今国会で成立すれば08度中に施行する。

「間伐費用の半額 市町村に助成へ 農水省方針」北海道新聞

農林水産省は二十八日、森林整備計画を策定した市町村を対象に、国が間伐費用の半額を助成する方針を固めた。森林整備による地球温暖化防止策の一環として位置づけ、森林間伐等促進法案(仮称)を今国会に提出する。

 新たな助成制度では、市町村が間伐の対象区域や面積などの森林整備計画を策定。その上で、国が間伐に必要な経費の半額、残りを市町村と森林所有者が負担する。作業道の整備や鳥獣被害防止のための柵の設置費なども対象に含める。このほか、施設整備などに限られている地方債を、間伐事業にも発行できるよう総務省とも調整している。間伐事業には、国が事業費の五割、都道府県が二割、森林所有者が三割を負担する助成制度があるが、都道府県の財政難などから事業が進んでいない。

記事では,都道府県の財政難から間伐が進んでいないとしているが,そもそも間伐を行いたいという土地所有者のニーズがあるのかが疑問である。林業活動を行っているから,間伐を行うわけだが,昨今の国内の林業の状況を考えると,間伐を行って林業で収益を得ようとする土地所有者は決して多いとはいえないだろう。

間伐によって林業が促進される可能性はあるかもしれないが,間伐は1度きりで終わるものではない。この法案は2012年までであるが,その後はどうするのだろうか?林業を取り巻く情勢が変わらなければ,そのまま放置される可能性もあるのではないだろうか。

また,間伐された材木をその後どうするのか,気になる。間伐材は,細くて劣勢な木を間伐する場合もあれば,優勢な木も間伐する場合もある。つまり,十分に建築の資材となる材木も含まれるのだ。大量に発生する間伐材を受け入れる体制が国内に整っているのだろうか。

結局,この間伐は,京都議定書で定義された日本の森林の炭素吸収量の上限値である3.9%に近づけるために行う間伐なのである。数字合わせのための間伐といっても過言ではないかもしれない。林業の側面から出てきたニーズがあって行われる間伐ではない。

京都議定書を達成させるためには,間伐が必要なことは認めるが,目的が京都議定書の数字の達成になってしまっている。長期的な大気中の二酸化炭素の削減や,長期的な林業の建て直し,という観点は,残念ながらあまり感じ取ることはできない。

「次期気象衛星の在り方探る 民間活用などで懇談会」中日新聞

現在、運用中の気象衛星「ひまわり6号」と「7号」の耐用年数が7年後に切れることを受け、次期衛星の運用の在り方を検討する「静止気象衛星に関する懇談会」(座長・山内弘隆一橋大教授)が29日、気象庁で開かれた。現在の白黒の衛星画像がカラーになるなど、高性能化が見込まれる次期衛星の民間活用などが検討課題。

 日本の気象衛星は、1977年打ち上げの「ひまわり(1号)」からスタート。当初、雲などの観測は3時間ごとだったが、6、7号は30分間隔に短縮、赤外線で夜間の霧も観測できる。さらに航空管制機能も併せ持つ「運輸多目的衛星」(MTSAT)として運用されている。

 次期衛星は、10分間隔で地表のカラー撮影が可能になるほか、解像度が現在の1キロから500メートルに改善される見込みだ。

 懇談会では(1)次期衛星の優れた観測機能を気象庁の業務以外の新たな分野に利用できないか(2)通信や放送などの役割を併用できるか-などを検討。民間からのヒアリングを経て、年末に結論を取りまとめる。

ひまわり6号,7号の後の気象衛星のあり方についての議論である。

「1)次期衛星の優れた観測機能を気象庁の業務以外の新たな分野に利用できないか」については,地表面(陸域)の観測に利用できると考えている。

「次期衛星はカラー撮影が可能」と記事にあるが,次期衛星が可視光の青・緑・赤の波長帯や,近赤外の波長帯がそれぞれ各バンドで分光されるデータを提供するのであれば,地表面の状態の把握は格段に行いやすくなり,植生のモニタリングも容易となるだろう。

次期衛星の空間解像度が500m~1000mであれば,周回軌道の衛星であるMODISやNOAA/AVHRR等のデータ並みの空間解像度となる。静止軌道である気象衛星の観測頻度は,周回軌道の衛星よりも断然に多いわけだから,雲の無い地表面を撮影するチャンスが増えるはずであり,雲を取り除いたデータをたくさん作成しやすい。たくさんの雲を取り除いたデータから,全地球スケールでの,土地の物理的状態(土地被覆)の把握や,季節変化(フェノロジー)を把握しやすくなるだろう。

ただし,地表面の観測への応用は,主に研究向きであり,民間へのメリットは少ないと思われる。

2007年夏,埼玉県熊谷と岐阜県多治見で40.9度を観測し,日本の観測史上最高の気温を記録した。このことは,当ブログでも取り上げたが,埼玉県の研究機関によると,気象庁の観測地点以外の観測地点で,40.9度を上回る気温を観測していたことを明らかにした。


「最高気温 41・8度だった 県の機関 昨夏、4か所で観測」読売新聞埼玉県版

県環境科学国際センター(騎西町)の観測では県内4か所で41・8度を記録し、計11か所で気象庁の記録を上回っていたことがわかった。

 同センターは06年からヒートアイランド対策事業の一環として、県内50か所の小学校に百葉箱を設置し、気温の観測を行っている。

 この観測では、15分ごとに気温を記録する温度センサー付きの「データロガー」と呼ばれる機器を使用。無作為に取り出した同機器20台の精度を調べたところ、誤差はプラスマイナス0・2度だった。

 07年8月16日の記録では、さいたま市と鷲宮町の計4小学校で41・8度を観測した。同市や越谷、東松山、川口、羽生の市部と杉戸町で41・0度以上の気温を観測した。

学校に設置された百葉箱に気温のデータロガー(多種多様なロガーがあるGoogle の検索例)を置いて気温を観測を行った結果,2007年8月16日に41.8度を観測していた,ということである。

さて,上記の事実をどのように解釈するだろうか。この41.8度が観測されたことから,熊谷や多治見の記録を塗り替えて,日本の観測史上最高気温記録として更新されるべきだろうか?

このことを議論するためには,まず観測の継続性を考え,そして観測環境も考える必要がある。

  • 継続性
  • 長期間に渡って継続的に気温観測がされてきた地点において,記録が更新された場合を考えてみる。今までの観測期間には,その記録は観測されていなかったわけなので,この記録更新は重要なイベントだったことが容易に理解できる。しかし,短期間の場合,記録が更新されたものの,先に示したように過去に記録を上回っていた可能性が否定できないため,重要なイベントだったのか判断できない。

    気象の観測は,短期間の観測値のみで議論されるのではなく,長期間の観測結果から議論される(気候学はまさに長期間の観測結果に基づいて議論する学問)。長期間の観測が継続されてきたデータになるほど,その観測データの価値が出てくるのだ。

    しかし,継続性だけでは,他の観測地点との比較ができない。

  • 観測環境
  • 実は,観測環境の違いによって,気温の観測結果はかなり異なる(観測機器側の話については,こちら)。例えば,夏の暑い日のアスファルト近くでは,気温は50度近くある場合もある。同じ場所でアスファルト近くで観測を継続するのであれば,意味はあるのだが,他の地域との比較はできない。そのため,観測環境を統一されているのだ。

    気象庁は,観測機器の設置環境について説明しており,アメダスの観測地点は,この観測環境を遵守するように設置されている。このように条件を統一することで,はじめて異なる地域の観測結果と比較できるようになる。


これらの,「観測の継続性」と「観測環境」の2つが揃って,はじめて「観測史上」最高の気温として比較される資格を得るのだ。


(実は,観測史上最高の気温を1点定めるのも重要だが,ヒートアイランドや温暖化などの気候変動を議論する場合には,記録を更新した地点の「数」が,より重要となるだろう。)

上の記事の観測を,この2つの観点から見ていくことにする。まず,継続性は不十分であることが分かる。観測年数はまだ数年程度である。そして観測環境の観点からは,学校の百葉箱を利用している点がポイントである。学校であれば,地面が芝生となっているのかが不明である。また,校舎や校庭の砂利の輻射熱が入る可能性がある。また,計測機器による違いも入る可能性がある。従って,気象庁のアメダスの観測環境とは異なる可能性がある(もちろん,観測条件を近づけようと努力していると思うし,限界もある)。

従って,今回の41.8度は「観測史上」最高の気温として認定するには不適格である。

別に埼玉県の観測を批判しているわけではない。継続して観測すれば,必ず有用なデータとなる。予算を確保して,是非とも長期観測を実現して欲しいものだ。


なお,今回はデータの観測頻度(サンプリング)については触れていない。観測頻度に関するエントリは以前に書いたが,この要素も観測結果を解釈する際に必ず考慮すべき要素である。

林野庁の空中写真の入手は,以前は日本森林技術協会で受け付けていたのだが,12月末で日本森林協会は空中写真業務を終了してしまった。そして,1月21日から別の業者が林野庁の空中写真の取り扱いをはじめた。以前は,林野庁撮影の空中写真の管理業務は,日本森林技術協会が随意契約で受託していたようだ。そのため,随意契約でなくした結果,別の業者に管理業務が移った形になったと推察される(まだもう一つ事情があるのだがここでは伏せる)。

そして,グリーン航業株式会社が,林野庁の空中写真の管理業務を受託し,この会社から空中写真が購入可能である。以下のサイトに詳細が掲載されている。ちょっと分かりにくいけど。

「空中写真関係」 グリーン航業株式会社
http://www4.ocn.ne.jp/~allgreen/shasinn-kannkei.html

「空中写真の入手方法」グリーン航業株式会社
http://www4.ocn.ne.jp/~allgreen/nyuushu-houhou.html

今回は空中写真の入手方法について説明しよう。


1. 林野庁撮影,地理院撮影の確認

まず,その対象地が林野庁撮影なのか,地理院撮影なのかを確認する必要がある。それには,次のサイトが参考となる。

「林野庁と国土地理院の撮影区域図」(社)日本林野測量協会
http://www3.ocn.ne.jp/~rinsokyo/html/0205.htm


2-1 林野庁撮影だった場合

いつ,どのくらいの縮尺で対象地が撮影されたのか,「標定図」から確認することができる。この図は,5万分の1地形図に,空中写真が撮影された航空機の撮影地点が○で示されている()。だいたい,1960年から1970年くらいから,5年おきに撮影されているので,年代を言えば,その時代に近い撮影の標定図を入手可能である。

入手するためには,5万分の1の地形図の名前を調べておく必要がある。その名前は国土地理院で確認できる。地形図閲覧サービスのこちらをまず表示させる。この「索引図による検索」の地図にメッシュ内に名前が入っているが,これは20万分の1の地勢図の名前である。ここで対象としている地域に対応するメッシュをクリックすると,さらに細かいメッシュ(8×8)が表示される。これが,5万分の1地形図の名前である。

年代と5万分の1地形図の名前を言えば,FAXでグリーン航業から標定図が入手可能である。その後の入手方法については,「空中写真の入手方法」のページを参照して欲しい。発注書へのリンクと価格が掲載されている。


2-2 国土地理院撮影だった場合

日本地図センターに詳しく掲載されている。標定図から探すことは基本的に同じだ。ただ,地図センターの場合は,ウェブで過去の撮影履歴まで確認できるので非常に便利だ。ただ,標定図自体は問い合わせを行って入手する必要がある。

「国土地理院空中写真 撮影範囲索引図」日本地図センター
http://www.jmc.or.jp/photo/gsi/index.html

PDFだが,1960年代からの撮影履歴が確認できる。

また,デジタル化した画像ファイルとしても空中写真は販売されている(リンク)ので,デジタル写真測量を行いたい場合はすぐに取り込むことができて便利である。

ちょっと時間差があるが,YahooとGoogleの地図の空中写真が更新された。

「Yahoo!地図情報」が航空写真を拡充、3社から提供受け「いいとこどり」(Impress)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/12/25/17999.html

航空写真は、複数の大手測量会社から提供を受けて表示する。原則として東京23区と大阪市、名古屋市が国際航業、それ以外の東名阪主要都市がパスコ、全国エリアなどがデジタル・アース・テクノロジーとなり、エリアや縮尺によって切り替わって表示される。航空写真下部に表示されるコピーライト表記を見ることで提供元を確認できる。


「Google マップ」の航空写真が鮮明に、東京23区や大阪市などで (Impress)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/01/18/18161.html

グーグルの公式ブログによれば、東京23区、名古屋市、大阪市の3地域で新たな画像を採用したという。これにより、航空写真の解像度が向上しただけでなく、再開発などで新たに建築された建造物も反映されたとしている。

2つの地図を比較してみよう。大きい建物で最近完成した23区内のものといえば,東京ミッドタウンが思いつく。Yahoo地図は国際航業,Googleは下部にはDigital Earth Technologyとなっている。

Yahoo地図の東京ミッドタウン
yahoo1.jpg
Google Mapsの東京ミッドタウン
google1.jpg

どちらも工事中である。ミッドタウンが完成する前の撮影のようだ。そして,良く見てみると色調はちょっと違うが,実は全く同じ写真なのだ。車の位置まで同じということは,元の写真は一緒である可能性が極めて高い。しかし,Googleの地図は国際航業の撮影とは書いてない。このへんの事情は謎である。

空中写真をいろいろ切り替えて比べてみると,YahooとGoogleの違いが見えてくる。23区に限定してみていくことにしよう。

Yahooは一番拡大した縮尺と,1段階縮小した縮尺において,国際航業の空中写真を使っており,23区は全て国際航業の空中写真となっている。そして,それより縮小した場合は,Digital Earth Technologyの別の空中写真に切り替わる(もちろん,縮小しすぎると衛星写真に変わる)。つまり,同じ縮尺では同じ会社の均質な空中写真を使用しており,縮尺を変えると空中写真のデータソース自体が変わるのだ。

一方,Googleの方は,最大に拡大して徐々に縮小していっても空中写真のデータソースは変わらない(もちろん,縮小しすぎると衛星写真に変わる)。そして,23区内で空中写真の色の違いがタイル上に発生している箇所があり,23区内でも別データを使う場合が発生しており,データが均質ではないのだ。つまり,場所によってデータソース自体が変わる。

まとめると,Yahooは縮尺で空中写真が変わるが,Googleは場所で空中写真が変わるのである。この2つのアプローチが良いのかは判断が難しい。Yahooのアプローチの方が見た目がきれいである。Googleのアプローチの方は,新しい空中写真が取得されれば,局所的に更新することができる。時間的な新鮮さから言うと,Yahooの場合は一括して更新するデータが揃うまでに時間がかかってしまうだろう。

というわけで,非常に細かい話ではあるが,YahooとGoogleの空中写真を比べた結果,細かい違いを認識することがきた。

ここ数日で,標高精度の問題は一気に解決となった模様。

精度不足の陸域観測衛星「だいち」、3月までに改善めど (読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080116i515.htm

精度不足で地図作りに支障が出ている陸域観測衛星「だいち」について、宇宙航空研究開発機構と国土地理院は16日、新たに開発した画像調整ソフトなどを使い3月までに改善できるという見通しを、文部科学省宇宙開発委員会で報告した。

 高さの精度の誤差は、季節変動パターンから補正した結果、同日までに、地図作製に必要な誤差5メートルにまで下げることに成功した。画像にモザイク模様のように入るノイズは、国土地理院が開発した軽減ソフトによって改善が見込まれ、3月までにソフトを導入する。

なお,宇宙開発委員会での報告内容は,以下で公開されている。

陸域観測技術衛星「だいち」データの地図への利用 (JAXAプレスリリース)
http://www.jaxa.jp/press/2008/01/20080116_sac_daichi.pdf

国土地理院が問題があると発言(リーク?)し,数日後の宇宙開発委員会で,JAXAと国土地理院は協力することで精度は目標は達成できると報告。問題発覚→解決の時間があまりにも短すぎて,非常に不自然に感じる。この辺の事情は良く分からないが,この数日間での解決には何か裏がありそうだ。


報告内容を少し細かく見ていく。

この内容によると,国土地理院側の改善方法としてスライド9枚目には,
「RPCモデルに対応したソフトウェアの導入(高さ精度向上)」
と書いてある。RPCモデルというのは,衛星画像の画素を地理座標へ変換するパラメータであるが,これを導入して改善したのだろうか。このRPCモデルはPRISMを購入する際にファイルとしてついてくるパラメータであり,商用のソフトでもこのRPCファイルを読み込むことは可能だ。地理院はこれをやっていなかったのだろうか。これを適用しないで,精度が出ていないと言うのはおかしいと思うのだが…。

iPod touchのメニュー画面がやっと賑やかになりました。

アップル、iPhone/iPod touchのソフト更新 (インプレス)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/38006.html

iPod touchでは、メールや地図、株価、天気、メモと5つのアプリケーションが新たに提供される。メール機能は、HTML対応でPOP3/IMAPが利用できる。GmailやYahoo!メールなども利用できる。地図アプリは無線LAN基地局を使って現在地を確認できる。国内の既存iPod touchユーザー向けには、アップグレードが2,480円で提供される。

2480円がなぜかかるのか疑問に思いながらも,インストール完了。お目当てのGoogle Mapsを表示させてみた。

ipod_touch_map.jpg

上の検索が,地名検索。駒場で表示させてみたところである。ピンの上にある「東京都目黒区駒場」という吹き出しをタッチすると,ブックマークにこの地点を追加できる。

左下の丸いアイコンは,無線LANから位置を探すためのボタンである。タップすると位置を特定しようとするが,私が今いるところでは位置が特定できなかった。

そして,下部中央に「検索」と「経路」があるが,検索と経路検索に切り替えることができる。経路については,「運転経路が受信できません」と表示され,どうやってもうまくいかなかった。Google トランジットとは違うのだろうか。その辺はまだ良くわからない。

下部の一番右の目のアイコンをタップすると,地図がめくれるようになって設定画面が表示される。そして,ピンを地図上に落とすことができたり,渋滞情況を表示できたり,地図表示の切り替えができる。渋滞情報は,まだ日本ではできない。地図の切り替えは,地図,地図+写真,写真の3種類があって,地形表示は対応していない。

地図表示の部分の使い勝手だが,非常に良い。地図を指でフリック(スクロール)すると,直感的に地図が移動していく。ダブルタップすると,タップしたところが拡大される。また,ピンチイン/ピンチアウト(指二本による閉/開)がそれぞれ拡大/縮小に対応している。

というわけで,日本国内でまだできない機能があるが,地図表示での操作部分は使い勝手は非常に良い。無線LANでの位置特定については,他のところで可能なのかはまだ分からないので,他の場所で試してみたいと思う。早く,街角の無線LANが整備されて,どこでもこのiPod touchを使って外で地図を眺められるようになったら面白いと思う。

前エントリーで,ALOS/PRISMの標高精度が目標の5mの精度に達しなかったことを紹介したが,多くの主要紙がこの問題を取り上げており,以下のような記事まで登場した。

観測衛星「だいち」の精度低下、「改良したい」と文科相 (読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080111ik01.htm

渡海文部科学相は11日、閣議終了後の記者会見で、宇宙航空研究開発機構の陸域観測衛星「だいち」の画像データの精度が想定より落ちている問題で、「当初目指していた精度が得られるように改良を加え、年度内をめどに調整していきたい。まだあきらめたわけではない」と話した。

まず,突っ込みを。精度は「低下」しているわけでも「落ちている」わけでもない。「低下」や「落ちている」というと,時間を経て精度が悪くなっていっている印象であるが,最初から精度が出ていないのである。もちろん,センサの劣化で精度が低下する可能性もあるが,この場合は最初から精度が出ていないと解釈する方が正しい。

また,改良を加えることについて言及しているが,どうやって精度を高めていくのだろうか。方法はいくつか考えられるが,画像上で正確な地理座標が分かっている場所を対応付ける方法がある。ただし,この報道されている6mは,地理座標の対応付けを行った上での結果なのか,判断できないため,なんともいえない。衛星プラットフォームにおける何らかの問題を解決して精度を高められる可能性はあるが,(私は専門ではないので分からないが),実際に衛星のところに行って対処することは不可能であるため,調整して精度が上げるための対策は限られるだろう。つまり,あまり期待できないと思われる。

一応,高さの検証をやっている(ネット上で見つけた)ペーパーを紹介。


海外のサイトでも,このALOSの精度の問題が取り上げられていた。この記事によると,国土地理院の人が精度が低いことについて言及しており,地理院のリークだったのだろうか。

Japanese satellite flops at map-making: official (Spacemart)

The 457.8-million-dollar "Daichi" satellite was sent into space to create detailed maps of remote parts of Japan, but the images have not been of sufficient quality, the government's Geographical Survey Institute said.

ステレオ視することで,地表面の3次元座標を取得可能なALOS/PRISM (だいち)であるが,目標としていた標高値の精度に到達しなかったようだ。

550億円の陸域観測衛星、誤差やノイズで地図作れず(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080109it01.htm?from=top

全世界の2万5000分の1の地図(基本図)の作成を主目的とした宇宙航空研究開発機構の陸域観測衛星「だいち」の画像データが、予想以上の誤差やノイズ(乱れ)の影響で、基本図を単独で作るには精度不足であることが8日、明らかになった。

国土地理院は、この画像データを、基本図の修正・更新の際に使う構想だったが、現地測量を追加しなくてはならないため、約4300面ある日本の基本図のうち完成したのは硫黄島など52面にとどまっている。

 基本図は、すべての地図の原本。日本全土は高度6000メートルからの航空写真を使って作製しているが、道路建設など土地変化の情報を随時反映させなければならない。国土地理院はこのため、同衛星が2006年10月に運用を開始してから年間700面のペースで画像を利用する予定だった。

 航空写真に比べると、単価が数百~数十分の1と安い上、航空機を飛ばさなくても定期的に更新画像を撮影できるのが理由だ。

 日本の基本図作りの地形データは、誤差5メートル以下という高精度が求められる。しかし、同衛星の画像は、等高線を決める「高さ情報」の誤差の大半が6メートル前後に集中していた。宇宙機構によると、打ち上げ前は誤差5メートル以下を想定していたが、衛星の姿勢制御が完全にはできず、高さ情報に誤差が生じるという。

 さらに、画像のノイズがひどいこともわかった。衛星画像は地上送信時に圧縮されるが、撮影した地表面の様子が予想以上に多種多様だったため、元の画像データに戻すことができなかった。宇宙機構は「事前に地上試験を行ったが、見抜けなかった」としている。

上記の記事にある「誤差5メートル以下」という目標としている値は,ALOSサイエンスプログラムのサイトに掲載されていた。

ALOSの構想とその背景
http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/sci/sci_jindex.htm

(1) 全球スケールでの地形図(空間データ基盤)の作成・更新を行う。
特に地形標高を精度5m以下、グリッド間隔にして10m程度で面的に計測する(ほぼ1:25,000地形図に対応)ことを目標とする。

ALOS/PRISMで作成した標高値の誤差が約6mだったらしく,5mという精度を達成しなかったのである。記事では「衛星の姿勢制御が完全にはできず」としている。姿勢制御に関するどの部分に原因があるのかかは分からないが,衛星プラットフォームの構造上の問題,GPSやスタートラッカーの精度の問題,衛星写真自身にぶれが含まれていた可能性などが考えられる。

この新聞記事のタイトルは言い過ぎである。5mを達成しなかったからといって,地図作成が全くできないということではない。また,この6mという誤差をどう捉えるのかが問題である。日本国内に限れば空中写真があるわけで,縮尺によるが厳密な精度が求められるため,要求精度を満たしたとしてもALOSが全てを取って替わることはなかっただろう。海外への展開が目的に含まれているのであるから,6mという誤差を許容できるかどうかは,海外の地図作成機関が判断すべきであり,それによって作れる作れないを決めるべきであろう(海外でのニーズがどれくらいあるか把握していないが)。

記事の言う画像のノイズについては,JPEG圧縮のことと推測される。ALOSでは,衛星プラットフォーム自身がJPEG圧縮し,地上へダウンリンクしている。例えば,一眼レフではRAW画像で撮影可能なのに,JPEGモードで撮影した,ということと同じである。JPEG画像であれば不可逆であるのは当然なので,「見抜けなかった」というJAXAのコメントはどういう意図があるのか良く分からない。このようなノイズは,判読する際に誤判読が発生する可能性があるが,当然のことながら地図が全く作れないわけではない。

従来のアメダスは10分間隔だが,10秒間隔での観測がスタートした。

きめ細かく見るダス 次世代アメダスが運用開始 (中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008010790122228.html

台風などによる暴風被害の軽減策強化が期待できるほか、気温も従来の10分間隔から10秒ごとに観測、きめ細かく温度を把握できる

風と気温が10秒間隔で観測可能となる。気温については,値にぶれは風に比べて大きくないので,これによって何かが改善するのかどうかは良く分からない。以前のエントリで,高頻度または連続的に観測していれば極値を更新していた可能性を指摘したが,防災上のインパクトは未知数である。

風については,インパクトは大きい。10分と10秒なので詳細さが格段に違ってくる。そして,最大瞬間風速が観測可能となるので,突風を観測するチャンスが増えるだろう。ただ,しばし発生する突風であるダウンバーストや竜巻は10km以下の現象である(引用)ため,現象を網羅的に把握できるには不十分である。ドップラーレーダの活用が必要不可欠であろう。

なお,最大瞬間風速の定義が変更になった。観測値の集計方法が変わるために10%程度従来よりも低い値となるようだ。

気象庁における瞬間風速の観測方法の変更について (気象庁)
http://www.jma.go.jp/jma/press/0710/26a/syunkan1026.html

気象官署(140ヵ所)での風観測をもとに、これまでの観測方法と新たな3秒間の平均値による観測方法とを比較した結果、風速値は、 20m/s程度以上の風速の場合、3秒間の平均値とすることで、0.25秒間隔の測定値より概ね10%程度小さくなります。

2007年12月4日から開始なので,次の台風シーズンに値がどのくらい変わってくるのかが注目である。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2008年になってしまったが,2007年を振り返る。

2007年はじめにtagchan.netをドメインを取得し,ほぼ1年経過した。なんとなく一国一城の主になった気分。Blogは2006年同様に色々と書き,作品もいろいろと作ったした気がする。

Blogで書いた文章は,地図・リモートセンシング・天気関係というニッチなジャンルで書いているのだが,頻度はそれほどではなかったので,散発的だった。なかなか文章を速く書けないので,仕方ないのだが,文章を軽くして更新頻度を多くしていきたい。

作品は,地図系を中心に色々と作った。年初はMapserverだったが,あまり使用用途がなく,途中でMapServerから離れてしまった。そして,4月にデジタル一眼レフを買ったので,写真+位置情報で作品を作った。特に,Flickrは写真に位置情報を簡単に入れられるので,地図とのマッシュアップは容易だった。また,PHPを使って,Exifの位置情報付き写真をマッピングするシステムも作った。秋以降は,API作りに凝って,日射量・標高・土地被覆の各APIを作った。最近は,Twitterに注目していて,空間情報を取り入れた作品を作っている。


2008年は,なんといっても最優先なのが,「博士論文の執筆」と「博士論文のための研究」である。これについては,当然のことながらBlogよりも優先順位は高い。だが,なるべくBlogの更新は続けたいし,なるべくエントリーの数を多くしていきたい。また,文章は重すぎないように心がけたいと思う。

作品系はいつも思いつきで作っているのだが,PHP,Javascriptを中心に,地図との関連で小さい作品を作っていければと思う。今後は,携帯電話系の位置情報を使ったサービスを視野に入れることができればと思う。また,PerlとかRubyがどんなものなのか興味がある。

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