京都議定書において,日本は1990年から6%の温室効果ガスの削減目標が設定されている。そのうち,森林管理によって,最大で3.9%が削減量としてカウントすることができる。つまり,1990年から温室効果ガスが増加していないと仮定し,森林管理によって3.9%の削減量が認められてカウントされた場合,他の削減量は2.1%で済む計算となる。実際には,全体では1990年から増加しているので,削減量は2.1%どころではないのだが,森林管理(林業+天然生林の保護・保全措置)による最大の3.9%の削減量は確実に達成しようと,政府は躍起になっている。
しかし,現状では2005年度までの試算では,議定書のルールに基づいた場合は吸収量は2.8%にとどまっている(参考:環境省中央環境審議会地球環境部会 第5回懇談会資料「森林吸収源対策について」)。認められる最大値である3.9%に近づくために,森林管理として人工林における間伐を追加的に実施する。そうすることで,京都議定書における森林管理の面積に含めることができるのだ。このような背景が,下記記事の間伐促進の背景である。
また,上記資料によると,120万ヘクタールの追加の間伐が必要らしい。120万ヘクタールは,東京都の面積の約6倍に相当する。広大な面積を,国の補助として間伐を行うことになる。
「 間伐促進で市町村に交付金 温暖化防止で特措法案」東京新聞
林野庁は29日、地球温暖化防止対策として森林の間伐事業を促進する特別措置法案をまとめた。農相が定める基本指針に基づいて、間伐事業に取り組む計画を作成した市町村に対し、国が事業費の一部を直接補助する交付金制度の創設を盛り込んだ。
間伐事業に対する国の補助金は、都道府県を通じて配分されているが、京都議定書の森林吸収量の目標達成に向けて毎年20万ヘクタールの追加的な間伐が必要なことから、直接補助により市町村主体の取り組みを促す。
特措法案に基づく交付金は、過去の実績を上回る追加的な間伐事業について、経費の半額を国が負担する。2012年度までの時限措置で、今国会で成立すれば08度中に施行する。
農林水産省は二十八日、森林整備計画を策定した市町村を対象に、国が間伐費用の半額を助成する方針を固めた。森林整備による地球温暖化防止策の一環として位置づけ、森林間伐等促進法案(仮称)を今国会に提出する。
新たな助成制度では、市町村が間伐の対象区域や面積などの森林整備計画を策定。その上で、国が間伐に必要な経費の半額、残りを市町村と森林所有者が負担する。作業道の整備や鳥獣被害防止のための柵の設置費なども対象に含める。このほか、施設整備などに限られている地方債を、間伐事業にも発行できるよう総務省とも調整している。間伐事業には、国が事業費の五割、都道府県が二割、森林所有者が三割を負担する助成制度があるが、都道府県の財政難などから事業が進んでいない。
記事では,都道府県の財政難から間伐が進んでいないとしているが,そもそも間伐を行いたいという土地所有者のニーズがあるのかが疑問である。林業活動を行っているから,間伐を行うわけだが,昨今の国内の林業の状況を考えると,間伐を行って林業で収益を得ようとする土地所有者は決して多いとはいえないだろう。
間伐によって林業が促進される可能性はあるかもしれないが,間伐は1度きりで終わるものではない。この法案は2012年までであるが,その後はどうするのだろうか?林業を取り巻く情勢が変わらなければ,そのまま放置される可能性もあるのではないだろうか。
また,間伐された材木をその後どうするのか,気になる。間伐材は,細くて劣勢な木を間伐する場合もあれば,優勢な木も間伐する場合もある。つまり,十分に建築の資材となる材木も含まれるのだ。大量に発生する間伐材を受け入れる体制が国内に整っているのだろうか。
結局,この間伐は,京都議定書で定義された日本の森林の炭素吸収量の上限値である3.9%に近づけるために行う間伐なのである。数字合わせのための間伐といっても過言ではないかもしれない。林業の側面から出てきたニーズがあって行われる間伐ではない。
京都議定書を達成させるためには,間伐が必要なことは認めるが,目的が京都議定書の数字の達成になってしまっている。長期的な大気中の二酸化炭素の削減や,長期的な林業の建て直し,という観点は,残念ながらあまり感じ取ることはできない。
トラックバック(1)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 京都議定書の炭素吸収源としてカウントするための人工林の間伐
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.tagchan.net/cgi/mt/mt-tb.cgi/141

コメントする