気象の観測結果を解釈するために重要な2つのこと

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2007年夏,埼玉県熊谷と岐阜県多治見で40.9度を観測し,日本の観測史上最高の気温を記録した。このことは,当ブログでも取り上げたが,埼玉県の研究機関によると,気象庁の観測地点以外の観測地点で,40.9度を上回る気温を観測していたことを明らかにした。


「最高気温 41・8度だった 県の機関 昨夏、4か所で観測」読売新聞埼玉県版

県環境科学国際センター(騎西町)の観測では県内4か所で41・8度を記録し、計11か所で気象庁の記録を上回っていたことがわかった。

 同センターは06年からヒートアイランド対策事業の一環として、県内50か所の小学校に百葉箱を設置し、気温の観測を行っている。

 この観測では、15分ごとに気温を記録する温度センサー付きの「データロガー」と呼ばれる機器を使用。無作為に取り出した同機器20台の精度を調べたところ、誤差はプラスマイナス0・2度だった。

 07年8月16日の記録では、さいたま市と鷲宮町の計4小学校で41・8度を観測した。同市や越谷、東松山、川口、羽生の市部と杉戸町で41・0度以上の気温を観測した。

学校に設置された百葉箱に気温のデータロガー(多種多様なロガーがあるGoogle の検索例)を置いて気温を観測を行った結果,2007年8月16日に41.8度を観測していた,ということである。

さて,上記の事実をどのように解釈するだろうか。この41.8度が観測されたことから,熊谷や多治見の記録を塗り替えて,日本の観測史上最高気温記録として更新されるべきだろうか?

このことを議論するためには,まず観測の継続性を考え,そして観測環境も考える必要がある。

  • 継続性
  • 長期間に渡って継続的に気温観測がされてきた地点において,記録が更新された場合を考えてみる。今までの観測期間には,その記録は観測されていなかったわけなので,この記録更新は重要なイベントだったことが容易に理解できる。しかし,短期間の場合,記録が更新されたものの,先に示したように過去に記録を上回っていた可能性が否定できないため,重要なイベントだったのか判断できない。

    気象の観測は,短期間の観測値のみで議論されるのではなく,長期間の観測結果から議論される(気候学はまさに長期間の観測結果に基づいて議論する学問)。長期間の観測が継続されてきたデータになるほど,その観測データの価値が出てくるのだ。

    しかし,継続性だけでは,他の観測地点との比較ができない。

  • 観測環境
  • 実は,観測環境の違いによって,気温の観測結果はかなり異なる(観測機器側の話については,こちら)。例えば,夏の暑い日のアスファルト近くでは,気温は50度近くある場合もある。同じ場所でアスファルト近くで観測を継続するのであれば,意味はあるのだが,他の地域との比較はできない。そのため,観測環境を統一されているのだ。

    気象庁は,観測機器の設置環境について説明しており,アメダスの観測地点は,この観測環境を遵守するように設置されている。このように条件を統一することで,はじめて異なる地域の観測結果と比較できるようになる。


これらの,「観測の継続性」と「観測環境」の2つが揃って,はじめて「観測史上」最高の気温として比較される資格を得るのだ。


(実は,観測史上最高の気温を1点定めるのも重要だが,ヒートアイランドや温暖化などの気候変動を議論する場合には,記録を更新した地点の「数」が,より重要となるだろう。)

上の記事の観測を,この2つの観点から見ていくことにする。まず,継続性は不十分であることが分かる。観測年数はまだ数年程度である。そして観測環境の観点からは,学校の百葉箱を利用している点がポイントである。学校であれば,地面が芝生となっているのかが不明である。また,校舎や校庭の砂利の輻射熱が入る可能性がある。また,計測機器による違いも入る可能性がある。従って,気象庁のアメダスの観測環境とは異なる可能性がある(もちろん,観測条件を近づけようと努力していると思うし,限界もある)。

従って,今回の41.8度は「観測史上」最高の気温として認定するには不適格である。

別に埼玉県の観測を批判しているわけではない。継続して観測すれば,必ず有用なデータとなる。予算を確保して,是非とも長期観測を実現して欲しいものだ。


なお,今回はデータの観測頻度(サンプリング)については触れていない。観測頻度に関するエントリは以前に書いたが,この要素も観測結果を解釈する際に必ず考慮すべき要素である。

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このページは、tagchanが2008年1月26日 09:02に書いたブログ記事です。

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