最大手の気象情報会社であるウェザーニューズが,小型衛星を打ち上げる計画を発表した。温室効果ガスや海氷を観測するという興味深い計画である。
世界初!サポーターとともに実現する衛星 (ウェザーニューズ プレスリリース)
http://weathernews.com/jp/c/press/2008/080703.html
気候変動や地球温暖化に対する取り組みのひとつとして、超小型感測衛星「WNI衛星(仮称)」を2010年に打ち上げ、温暖化の原因となる温室効果ガスや、温暖化によって減少し続けている北極海の海氷などを企業や一般サポーターとともに感測するプロジェクトを開始します。本プロジェクトは、東京大学、千葉大学、アクセルスペース(※2)とともに研究・開発を進めており、従来の衛星では成し得なかった超小型衛星によるデータ感測を目指します。極域の画像を撮影し海氷を解析するとともに、衛星と世界各地に設置した感測機の間でのレーザー光の減衰を評価することで温室効果ガスを感測する斬新な方法を試みます。
興味深い理由としては,一般企業が計画する地球観測衛星であること,小型衛星であること,温室効果ガスの計測方法,参加型であること,が挙げられる。
(1) 一般企業が計画する地球観測衛星であり,衛星のみで儲けようと考えていない(?)ところ
地球観測衛星は,宇宙機関が打ち上げる場合と,一般企業が衛星写真の販売用として打ち上げる衛星,の2種類がある。前者だとNASAのLandsat,NASAと経産省のASTER等があるが,JAXAのだいち(ALOS)もこのカテゴリに入る。後者としては,GeoeyeのIKONOSやDigitalGlobeのQuickBirdやWorldView-1がある。プレスリリースを見る限りでは,観測データそのもので収益を得ようという雰囲気は伝わってこない。衛星のみで収益を得ようとしてないのであれば,それは低コストの小型衛星だからこそである。
(2) 小型衛星であること
小型衛星であることで,JAXAやNASAが打ち上げる衛星よりもはるかに低コストである。そうなると,もちろん失敗する可能性も高いかもしれない。ただ,失敗しても金銭的な損失は軽くて済むことになる。
また,プロジェクトにかかわる大学と企業に注目したい。特に,東大の中須賀研究室がかかわっている。中須賀教授は,小型衛星の打ち上げおよび運用の第一人者である。つまり,それなりにノウハウを持ったところとウェザーニューズは組んだことになり,衛星のプロジェクトを0からはじめる場合と比較して,開発は短期間で済み,成功の可能性も高いだろう。
(3) 温室効果ガスの計測方法
従来の地球観測衛星では,網羅的に地表面または大気を観測するのが普通である。しかし,この小型衛星では,観測のためには地上に機器を設置する必要があるらしい。この方法の原理がわからないので,精度がどのくらい出るのかが未知数である。しかし明らかなことは,地球温暖化の温室効果ガスの増加を議論するためには,網羅的な観測が必要不可欠であるため,機器の数と機器の分布が重要となる。ただ,低コストでそれなりの精度で温室効果ガスが計測可能というのであれば,従来の地上観測の点数と比べれば多くなるため,それはそれで有効な手段である。
(4) 参加型
温室効果ガスの計測のためには地上に機器を設置する必要があることを述べたが,これには機器の設置に賛同する人が大勢必要であることは言うまでもない。そこを企業・学校・一般サポーターによる「参加型」とすることで,機器の数を稼ぐ計画のようだ。参加者は,もちろん機器のコストがゼロに近いことが望ましいだろう。
地球観測衛星の計測に参加型を組み合わせるというのは,はじめてのアプローチであろう。トップダウンの衛星による観測と,ボトムアップの計測を繋ぐ新しい試みといえる。
まとめ
今までの地球観測衛星は,トップダウン的で最大公約数な機能を持った衛星が多かった。しかし,低コストな小型衛星が主流になれば,特定の目的のために必要な地球観測衛星が計画され,運用される可能性が高くなる。そうなると,リモートセンシングの分野は次のステージに進むことができるのではないだろうか。
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