2009年2月アーカイブ

アナログでしか存在しない地図をデジタル化し,他のGISや地図と重ねられたら便利なことも多いだろう。では,それをどのように実現すれば良いのか?今回は,数回に分けてこれまで何度か紹介してきたQuantumGISを使って,デジタル化された地図画像に位置情報を与える方法を説明したい(世界地図よりは国内の地図を中心としています)。

まず調べておく必要があることは,どの地図投影法なのか,という点である。手書きで完全にオリジナルな地図であれば,残念ながら重ならない。もし,行政機関が出したような「ちゃんとした」地図が基となっていれば,投影法が定義された地図のはずであり,地理情報を与えることが可能だ。ちなみに,行政機関等の地図の投影法は以下のように決まっている。

toueihou.jpgESRIジャパン株式会社 GISとは? - 投影法について

もっともポピュラーな1/25000地形図は,UTM図法(横メルカトル図法)で投影されている。UTM図法については,日本地図センターのサイトの説明が詳しい。また,1/2500や1/5000などの大縮尺の地図の場合は,平面直角座標系による横メルカトル図法となる。この投影法についても,さきほどのサイトが詳しい。

地理情報を与えたい地図画像の投影法が分かったとして,次にどうやって地図画像を「地理情報付き地図画像」とすれば良いか。それは,画像上のある点が,どの地理座標に対応するのかを教えてあげれば良い。そのような点を複数(だいたい4点以上)を与えることができれば,他の画素の地理座標が推定できるようになる。

QuantumGISでは,このようなことができる。そのプラグインとして,Georeferencerという機能が付いている。このプラグインでは,先ほど述べた,画像上の点と地理座標を対応させて,画像に地理情報を与え,「地理情報付き地図画像」を作成する機能が付いている。

では,どの情報を参考に地理座標を取得すればよいだろうか。そこで,WMSが利用できる。WMSを利用することで,自前でGISデータや地図を用意しなくても良い。そのため,地図画像がデジタル化されており,インターネットに接続されていれば,地図画像を「地理情報付き地図画像」へ簡単に変換できる。

QuantumGISでの具体的な方法については,次のエントリで紹介したいと思う。

最近のエントリでは,Web Mapping Service (WMS)に注目してきた。国内を中心に代表的なWMSをリストアップしていきたい。なお,Quantum GISでのWMSの使い方は,こちらのサイトが参考になる。下記のWMSのURLを,Quantum GISのURLに入力することになる。

1. 基盤地図情報25000

  • 配信元:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
  • 縮尺: 1/25000
  • サイトのURL
    http://refits.cgk.affrc.go.jp/tsrv/jpmap/kibansrv/index.html
    http://refits.cgk.affrc.go.jp/tsrv/jpmap/kibansrv/srvinfo.html
  • WMSのURL
    http://refits.cgk.affrc.go.jp/tsrv/jpmap/kibansrv/kiban25000wms.cgi?
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:JGD2000(世界測地系), WGS84, Tokyo(旧測地系)
    UTMゾーン51~55 測地系:JGD2000, WGS84, Tokyo
    平面直角座標系第1~19系 測地系:JGD2000, Tokyo
  • 備考
    必要な情報はこちらにまとめられている。地理空間情報活用推進基本法により,登場したデータ。縮尺1/25000の地図として基本的なデータである。

2. 地すべり地形分布図データベース

3. オルソ化空中写真ダウンロードシステム

  • 配信元:国土交通省国土計画局
  • 写真の縮尺: 1/8000~1/15000
  • サイトのURL
    http://orthophoto.mlit.go.jp/
  • WMSのURL
    http://orthophoto.mlit.go.jp:8888/wms/service/wmsRasterTileMap?
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:JGD2000
  • 備考
  • 地図に投影された空中写真(オルソ化空中写真)である。詳しい説明は以前のエントリに書いた。

4. OnEarth, JPL WMS Server

  • 配信元:NASA/JPL
  • サイトのURL
    http://onearth.jpl.nasa.gov/
  • WMSのURL
    http://wms.jpl.nasa.gov/wms.cgi
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    NASAが打ち上げた衛星画像がたくさん収録されている。解像度はかなり粗く,マニアックなものも多い。大陸~全球スケールの画像であれば,IDが91がおすすめ。市町村一個程度のスケールであれば,IDが2,5,10がおすすめ。

5. 国土地理院数値地図50mメッシュ(標高)

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/ogc/wms?ServiceName=50m_mesh_wms
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    縮尺が1/25000の地形図の等高線を用いて50m四方のメッシュの平均値を計算したデータ。標高によって色分けされており,陰影図もある。

6. 国土地理院空間データ基盤25000

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • 縮尺: 1/25000
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/ogc/wms?ServiceName=basemap_wms
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    上記の基盤地図情報が出る以前から発行されている数値地図である。基盤地図情報よりは,表示されるレイヤーは多いようだ。ID1と2をチェックしないで表示すると良い。

7. ESRI World Vegetation

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • 縮尺: 1:15000000
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.com/servlet/com.esri.wms.Esrimap?ServiceName=ESRI_Veg&
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    世界スケールの植生分布図。凡例が良くわからない。

8. World Temperature Zones (Annual)

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • 縮尺: 1:15000000
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.com/servlet/com.esri.wms.Esrimap?ServiceName=ESRI_Temp_Yr&
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    世界スケールの温度帯分布図。凡例が良くわからない。

9. World Precipitation Zones

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • 縮尺: 1:15000000
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.com/servlet/com.esri.wms.Esrimap?ServiceName=ESRI_Precip_Yr&
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    世界スケールの降水量のクラスの分布図。凡例が良くわからない。

10. Digital Chart of the World

  • 配信元:Demis
  • 縮尺: 1:1000000
  • サイトのURL
    http://www2.demis.nl/mapserver/mapper.asp
  • WMSのURL
    http://www2.demis.nl/mapserver/wms.asp?
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    世界のベクター型データベース。元サイトはこちら。今後は更新の見込みが無いので,使わないほうが良いかもしれない。

11. World Basemap

  • 配信元:Geography Network Japan (ESRIジャパン)
  • 縮尺: 1:1000000
  • サイトのURL
    http://www.geographynetwork.ne.jp/
  • WMSのURL
    http://www.geographynetwork.com/servlet/com.esri.wms.Esrimap?ServiceName=ESRI_World&
  • 投影法
    等緯度経度(Geographic) 測地系:WGS84
  • 備考
    ESRIが出しているベースマップ。ただ,東京を拡大すると微妙な感じでした。

海外のサイトで,いくつかWMSのリンク集を発見した。とても検索がしづらいが,掘り出し物がみつかるかも。

良いサイトやサービスを発見したら,教えていただけると助かります。

このエントリーでは,基盤地図情報の地形データをGISソフト等で解析できる形に変換し,無料のGISソフトで表示する方法を紹介する。

基盤地図情報について

基盤地図情報とは,国や地方公共団体が整備したデジタル化された地理情報である(詳細)。 なお,国は基盤地図情報を無償でインターネット上で公開することが法律で定められている。ただし,使用には著作権者の許可が必要である(国土地理院の地図についてはこちら)。

今回は特に地形データ(DEM)に注目してみたい。5mメッシュ(正方形のメッシュで,一辺の長さが5mという意味)の地形データは2008年3月から公開されており,範囲を広げてきている。また,10mメッシュについては,2008年10月に四国が整備されて公開され,2009年2月1日からは全国が整備されてダウンロード可能となった。国土地理院が発行している,全国で整備された地形データは50mメッシュしかなかったため,10mとなったことで大幅に解像度が向上した。

5mおよび10mメッシュの地形データは,今後は研究用途でも利用が広がる可能性がある。そこで,公開されいているデータ形式から,プログラムによってGISソフトで読み込みやすい形に変換することを試み,無料のGISソフトであるQuantum GISで表示させてみることにした。

プログラムについて

作成したプログラムはCygwin上で開発して動作確認を行っており,LinuxまたはCygwin上で動くプログラムである(Macでも動く?)。Cプログラムを含むため,Cygwinを使う場合はgccがインストールされている必要がある。Cygwinのインストール方法はウェブ上にたくさんあるので参照されたい。変換プログラムはこちらである。zipファイルを解凍するとフォルダが出てくるので,フォルダごと実行するディレクトリへ移動する。

地形データのダウンロード

今回は10mメッシュの地形データをダウンロードしよう。基盤地図情報のダウンロードサイトへ移動し,「JPGIS 2.0 (GML) 形式」をクリックする。そして画面が切り替わり,ページ下部の「10mメッシュ(標高)」の右にある「地図から選択」をクリックする。そのページの説明に従って,必要なメッシュの箇所を選択し,ダウンロードして解凍する。すると,xml形式のテキストデータが出てくる。そのファイルを,先ほどのプログラムを解凍した時に出てきたフォルダへ移動する。なお,同じ別の箇所を選択してDLして解凍したxmlファイルであれば,先ほどのフォルダへ移動すると,バッチ処理で変換を行うことが可能である。

プログラム実行

データのダウンロード,解凍,移動が完了したら,プログラムのフォルダへ移動し,dem.cshを実行する(一応,Cプログラムのexeファイルはあるが,コンパイルした方が良いかもしれない)。最初にメッシュサイズが10mか5mか聞かれるが,「10m」を入力すると,処理がxmlファイルがある分だけ繰り返し実行される。

このGML形式のファイルは,タイル状になっており,データの格納順番は,北西からx軸の正方向(西→東の順)へ進み,東端に達すると、y軸の負方向(北→南の順)に進み,南東端に至るという順序であり,それがテキストで記載されている。なお,このデータは等緯度経度の投影法である。これをその順番のとおりに浮動小数点(Float)のバイナリデータに変換していく。それを,今回のようなラスタデータの変換が容易なGDALというプログラムで読み込めるように,位置情報を付加しれたヘッダーファイルを生成している(厳密にはENVIフォーマットにしている)。

なお,このプログラムは個々のxmlファイルで変換を行うことが可能である。しかし,データどうしを接合(モザイク)をすることはできない。GDALでは,gdal_merge.pyでできるらしい。

【2009年2月14日追記】
どうやら,gdalwarpでもできるようです。

Quantum GISの表示方法

処理が完了すると,個々のファイルには「ファイル名.bin」と「ファイル名.bin.hdr」という拡張子が付いたファイルができ,これらは本体とヘッダーファイルとなっておりセットとして扱う。これでQuantum GISで読み込むことが可能となる。

Quantum GISを起動し,ラスターレイヤーを追加を選択し,ファイルの種類を一番したの項目を選択し,.binのファイルを選択すると,Quantum GIS上に表示されるはずである。

表示結果例

Quantum GISで表示した例を紹介する。なお,カラーマップは「原色」にして表示した。また,地形データは接合を行っている。

5m.png

10m.png

全体的な地形表現は同じである。なお,同じデータ内の色の違いには意味があるが,2つのデータ間の色に違いは意味がないので注意が必要である。2つのデータの地形の表現を観察すると,詳細さがまったく異なっているのが分かる。


以前に紹介したWMSのレイヤーを重ねてみよう。基盤地図情報25000のレイヤーを重ねてみた。なお,オルソ空中写真も容易に重ねることができた。

kiban.png

地形データの作成方法について

10m地形データの作成方法はメタデータでの表記で以下のように示されている。25000分の1地形図の等高線からメッシュデータに変換したデータである。

作成方法(全国の2万5千分1地形図の等高線データ等から不規則三角網(以下、「TIN」という。)を作成して、地表を緯度経度ともに0.4秒(約10m)間隔で区切った方眼(メッシュ)の中心点の標高を記録した。)

http://fgd.gsi.go.jp/metadata/fmdid0-5.xml

一方,5m地形データの作成方法はメタデータでの表記で以下のように示されている。こちらは,空中写真やレーザ測量から直接作成したデータである。

この標高データは、地表を5m間隔で区切った方眼(メッシュ)中心点の標高を、航空レーザスキャナ測量によって取得したデータをもとに、家屋や橋、樹木等を取り除いた地表面データとして作成した高精度な数値標高モデル(DEM)です。

http://fgd.gsi.go.jp/metadata/fmdid0-6.xml

この標高データは、地表0.2秒間隔で区切った方眼(メッシュ)中心点の標高を、写真測量によって取得したデータをもとに、家屋や橋、樹木を取り除いた地表面データとして作成したものです。なお、一部山地等の森林部については表層面データとなっています。

http://fgd.gsi.go.jp/metadata/fmdid0-7.xml

10m地形データは,人によって引かれた等高線から作成しており,1ステップ介していることになる。等高線を作成した時点で詳細な地形表現は削ぎ落とされている。一方,5m地形データは,直接作成している(半自動)ので,空間解像度も高いことも要因だが,より詳細な地形が表現できる。また,空中写真とレーザ測量では,レーザ測量のほうが詳細な地形が表現できる。

Google Earth 5.0がリリースされた。一番の目玉がGoogle Oceanといわれるように,海底地形や海に関するコンテンツが充実したことである。その辺は,多くの方々が取り上げるだろうから,このエントリーでは特に言及しない。私が注目したいのが,過去の航空写真や衛星写真が表示される機能が搭載されたことである。

過去のデータに注目してきた私としては,今回の機能に注目している。これまでの過去の地図や航空写真関連のエントリは以下のとおりである。
明治時代の「迅速測図」がウェブで公開
goo地図に昭和38年の空中写真が登場
Yahoo! Japanによる昭和30年代の地図の閲覧サービス
横浜市の1/3000地形図がkmlで公開

さて,実際に見てみることにする。Google Earth 5.0をインストールして起動すると,メニューアイコンのところに,時計のようなアイコンがある。そこをクリックすると,スライダが登場し,過去の航空写真や衛星写真が切り替え可能となる。

ge_menu.jpg

試しに,東京23区で表示してみよう。
まずは,1997年から。23区内は高解像度なものに整備されている。周囲の画像は,解像度が粗い衛星画像であると考えられ,未整備と解釈できる。

1997.jpg

2002年。新しいデータがある部分は,新しい画像に更新されている。

2002.jpg

2005年。表示範囲の全域は,高解像度の画像となっている。

2005.jpg

2007年。画像の色が変わっている部分があり,更新されているところがあることが分かる。

2007.jpg

次に,ミッドタウンを拡大してみよう。以前は防衛庁本庁舎檜町庁舎だった。そこを更地にし,建築されていく様子がわかる。なお,以下の画像の日付は,Google Earthの左下に表示されていたものである。年までしか表示されていないものは空中写真,月日まで表示されているものは衛星写真だろうか。

midtown.jpg

地図や衛星写真は最新のデータであるという暗黙の了解があるが,データの新鮮さを意識できる意味で,時系列を意識させるこの機能は重要である。今回のようなな航空写真や衛星写真だけでなく,あらゆる地図や位置情報が,過去にさかのぼることが可能な形で公開されることを希望したい。