2010年1月アーカイブ

昨日のエントリで、Google Earthでハイチの被災地を撮影した商用の高解像度衛星画像が公開されていることを紹介したが、WMSで公開されていることがわかった。これはインパクトが大きい。

この大地震によって、地図関係の大きな動きとしては、OpenStreetMapの活発な活動が挙げられる。OpenStreetMapは参加型で地図を作成するプロジェクトである。今回のハイチの大地震により、世界各地の人々から、あらゆる情報を使い、ハイチの地図の作成が行われている。当初は、Landsatなどの中解像度の衛星画像が活用されていたのだが、とうとう商業用の高解像度衛星画像が活用されるようになった。

これらの衛星画像は、これまで紹介してきた国際的に標準的な地図画像のやりとりの方式あるWMS(Web Mapping Service)が利用されているのだ。これによって、公開するだけでOpenStreetMapで活用できるようになったのである。もちろん、WMSなので、Google EarthやQuantum GISなどの他のクライアントでも表示可能である。Quantum GISでのWMSの利用方法 はこちら、Google EarthでのWMSの利用はこちらを参照されたい。

WMSの情報は、WikiProject Haitiに示されている。以下に各衛星画像のCapabilitiesのURLを示す。

・DigitalGlobe
http://maps.geography.uc.edu/cgi-bin/mapserv?map=/home/cgn/public_html/maps/mapfiles/haiti.map&version=1.1.0&SERVICE=WMS&REQUEST=GetCapabilities
地震前と後の写真がある。ただし、地震後の写真は白黒のようだ。

・Geoeye
http://maps.nypl.org/relief/maps/wms/32?request=GetCapabilities
地震後のカラー写真がある。

これらの写真を使い、被害調査が行われている。写真で判読であるため、制約があることは否めないが、倒れた建物、倒れそうな建物、通れない建物、倒壊した橋などもマッピングされている。また、国連の要請で、難民キャンプを求められているらしい。(リンク

OpenStreerMapにログインし、ハイチの画像を見ると、情報がどんどん追加されているのがわかる。

最新の情報なのかわからないが、OpenStreetMapのWMSが公開されており、そこで追加されている情報を見ることができる。

OSM WMS Service
http://vizure.net/support/blog/item/1-osm-wms-service

上記のWMSのCapabilities
http://data1.vizure.net/server/services/osm.xml

このような規模で、参加型によって、衛星画像を活用して災害調査が行われた事例は、はじめてではないだろうか。これを実現できたのは、WMSなどの相互運用技術が広まってきたからである。

インド洋の大津波の際は、高解像度衛星画像によって、津波の様子や渦を撮影し、そのインパクトが世界に伝わった。5年が経過し、今度は見るだけでなく、衛星画像を使うところまで、到達したといえる。非常に感慨深いものがある。衛星画像の利用の新しいパラダイムシフトが起きた瞬間かもしれない。

ハイチ地震の全容が次第に明らかになってきている。それと同時に、衛星観測によるデータが出てきている。1月14日夜の時点で確認できているのが、日本のJAXAのALOS(だいち)、アメリカの商用衛星Geoeyeの画像である。色々な面で違いが分かりやすいので紹介する。

1. ALOS(だいち)

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるハイチ地震にともなう緊急観測
http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_av2_haiti_100114.htm

一部の拡大画像が紹介されている。2時期の画像の比較から、被害が起きたところは白くなっているということらしい。上記のデータが国際災害チャーターへ利用されている。

国際災害チャーター
http://www.disasterscharter.org/activation_details

衛星写真地図が公開されている。ただし、高解像度版の画像は公開されていないらしい。

だいちは、AVNIR-2の10m解像度による観測である。ポインティング角度が-26度なので、直下視しか撮影できないPRISM(白黒画像だが2.5m解像度と高解像度)との同時撮影はできない。そのため、擬似的に高解像度の衛星画像(パンシャープン画像)が作成できない。

また、被害が起きたところは白くなっているということだが、ポインティング角度が大きいことと(反射角度)、比季節が異なる点(太陽高度角)から、白イコール被害箇所という解釈は慎重になる必要があるかもしれない。ただし、一般的には倒壊箇所は白っぽくなるといわれている(屋根が崩壊せずに倒壊した場合は、白っぽくならないため、判読が難しい場合がある)。

2. Geoeye

Haiti imagery layer now available
http://google-latlong.blogspot.com/2010/01/haiti-imagery-layer-now-available.html

以前からGeoeyeとGoogleは連携が密である。それを利用して、GoogleがGeoeyeの衛星画像が閲覧できるKMLファイルを公開した。このファイルをGoogle Earthに表示させ、被災前の高解像度衛星画像との比較もできるようになっている。

この写真の解像度は、画像の圧縮が影響していて判断できないが、1mから数mのオーダーの解像度ではないだろうか。撮影範囲はかなり広い。判読してみると、建物ごとに倒壊の度合いが分かる。しかし、上から見ているために、崩壊しているのか判別しづらい部分もある。

3.考察

JAXAのだいちは、国際チャーターで一番早く画像を提供したが、画像ファイルであり、しかも解像度なりの詳細さをもった閲覧ができない。一方、GoogleとGeoeyeでは、Geoeyeが撮影した衛星写真をGoogle Earthという世界的に有名なソフトウェアにより、地理情報として、その写真が持つ解像度なりの表示を実現し、世界中の人が被災状況を見ることができる機会を提供した。

だいちとGeoeyeには衛星センサとしての差は歴然としている。これはGeoeyeの方が新しいわけで仕方ない。とはいえ、衛星画像の品質が全く同じだったと仮定しても、どちらが使える衛星写真を提供しているといえるだろうか?


個人の考えであるが、災害等の緊急時においては、だいちの画像は、圧縮せずに地図と重なる形式(つまり地理空間情報)で公開するべきである。つまり、以前から当Blogで取り上げているようなWMS(Web Mapping Service)による公開を行うべきである。そうすることで、衛星画像にアクセスできる人が増え、衛星画像が役に立つデータとなる可能性がある。なお、WMS形式はGoogle Earthにも表示できる。

誰がユーザーかによって、公開方法は異なるだろう。しかし、衛星画像は地図であり、たくさんの人と共有すべきデータに近い。これからは、衛星センサのみを見るのではなく、どう衛星画像を使われるのかを考え、現在の情報技術に対応した衛星画像の情報流通のデザインを考えていく必要があるだろう。

阪神淡路大震災から15年ということもあり、地震関係の話題をよく目にする。流行もので大変恐縮だが、Twitterに代表されるソーシャルメディアが地震防災研究に貢献できる可能性について考えてみたいと思う。ここで「地震防災研究」としているのは、実際に地震防災に役に立つ手段なのかが明らかにされておらず、有効性を評価するための研究が必要だからである。しかし、以下の2つの項目に記した文章から分かるように、研究ができる下地は整っており、地震防災研究へ貢献できる可能性は十分にあるといえる。


・地震予知の研究にソーシャルメディアは使える?

毎日新聞のサイトで以下のような記事を発見した。

地震:異常現象を予知に生かそう 関西の産学が本腰(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20100106k0000e040069000c.html

空が赤く光るといった地震前の非日常的現象の情報を集め、地震予知に生かそうという取り組みが今月から始まる。科学では分からない「未科学」の部分を解き明かそうという試みで、「関西サイエンス・フォーラム」(会長=秋山喜久・関西電力相談役)が計画した。京都大や大阪大などの地震や気象、生物等の研究者約30人が参加、一般からの情報も募る。

国は、このようなタイプの研究は行わない立場であるが、大学などの研究機関がこういう研究を行うことは意義がある。「未科学」という言葉が新鮮である。さて、この研究を意味のあるものにするためには、異常現象である可能性がある情報を数多く収集することである。当然のことながら、モバイル端末や携帯電話による一般からの情報は、重要なウェイトを占めるだろう。

こういうものこそTwitterのようなソーシャルメディアが活用できる。タグ付けして写真を撮影するなり文章を、簡単な住所と共にTweetすればよい。iPhoneならTwitterクライアントであれば、自動的に位置情報をつけることもできる。大きな地震がいつ起きるか分からないため、情報を募る期間が読めないという問題点はあるが、上記の方式で情報を収集するコストは、プラットフォームができているので、ほとんどかからないため、やってみる価値はあるのではないだろうか。


・被害などの情報の集約にソーシャルメディアは使える?

アメリカでは、USGS(地質調査所)が、Twitterで地震の情報を収集できるかどうか研究を行っているというニュースを発見した。

アメリカ地質調査所,ツイッターを活用した地震情報収集システムを実験(メディア・パブ)
http://zen.seesaa.net/article/137775957.html

アメリカ地質調査所はこれまでも世界各地で頻発している地震を速報しており,RSSフィードでも時系列で配信している。世界中の限りあるセンサーからのデータをもとに地震発生地を検知していた。ところがこのTED( Twitter Earthquake Detection)では,これまで違って人によるコメントや写真などの情報が地球上のあらゆる場所から集められる。 "earthquake"とか"tremor"のようなキーワードを含むツイートを収集していけば,膨大な情報が集まるようになるだろう。2008年7月の南カリフォルニア地方で起こった地震では,携帯電話の通話が滞ることがあったが,SMSやモバイルアプリ経由のツイッターがかなり使われたという。緊急時のコミュニケーションツールとしてもツイッターは定着していきそうだ。

報道機関や行政機関などは、被害の迅速な把握が必要だが、ソーシャルメディアによって蓄積される情報が役に立つ可能性がある。ノイズが多いことが予想されるが、位置情報が付与され、地震に関するキーワードで検索するなり、決められた(どのように決めるのかは課題)ハッシュタグを付けることで、必要な情報を抽出できる可能性が高い。

大地震が発生すると通信網が遮断される可能性があるため、このような仕組みがうまく働くのかは未知数である。ただ、前述したように、このような可能性を明らかにするための研究にかかる費用は、すでにTwitterなどのプラットフォームはできているため、少なくて済むのである。大きな地震は発生して欲しくないのだが、大地震のような大規模災害が発生した際には、ソーシャルメディアの可能性および有効性を評価してみたいと思ったりしている。

最近は気象関連の話題について触れていないが、2つほど触れつつ、2010年を展望してみたいと思う。

・ソメイヨシノの開花予想の廃止

2009年12月25日に気象庁からさくらの開花予想を廃止することを発表した。民間気象会社との予報の比較は話題性があったが、これは気象庁にとっては勇気ある撤退といえる。気象の自由化が行われて15年経過したが、民間に任せられるものは任せても良い段階にきているのではないか。今後は、継続性が重要な観測や防災の観点から重要な予報に絞り、明確な線引きをした上で気象庁は業務を続けるべきだと思う。

そのように考えると、紫外線予報や黄砂予報は気象庁が予報を出すすべきかどうか、ということは議論の余地があるかもしれない。今年は独立行政法人や財団法人の見直しが始まると思うが、気象業務支援センターのありかたを含めて、このような議論が起きることを期待したい。


・Twitter + 位置情報は新たな気象情報のブレークスルーが起きるか?

今年はTwitterが大ブレークとなったが、気象関係での利用可能性には引き続き注目していきたい。昔、Twitter検索で気象関係のキーワードの抽出を試みたが(リンク)、ハッシュタグで#tnkをつけて天気に関する情報の収集を試みる動きがあり、今後の展開に注目していきたい。

また、TwitterがAPIで位置情報をサポートしはじめたように、位置情報と天気がリアルタイムで結び付けば、だれもがリアルタイムで任意の地点の気象情報が収集できる可能性がある。Twitterのユーザ数の爆発的な増大を考えると、天気の新しいブレークスルーが生まれる可能性も十分にありうる。

Twitterを利用してリアルタイムでユーザが報告する気象の情報を収集できるようになるが、そのようなプラットフォームが構築された先については、専門家(気象予報士)の関与が不可欠になるだろう。これによってはじめて、科学コミュニケーションまたは気象災害に関するリスクコミュニケーションがなされることが期待される。技術的にはこれを実現することは可能である。

iPhoneアプリで考えると、こういう観点で作らたアプリは存在していないので、その辺のサービスを気象事業者がはじめてみるのもおもしろいのではないか。ただし、気象業務法的にどうなのかは現時点で明言できないので慎重な判断が必要かもしれないが・・・。