リモートセンシングの最近のブログ記事

米国のロックバンドであるレディオヘッドのプロモーションビデオ(以下PV)に,レーザーを使った最新の測量技術が使用されているようだ。

レディオヘッドが「ライトもカメラも使わない」実写ビデオ公開 (IT media)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/15/news026.html

通常のビデオ撮影にはカメラとライトを使うものだが、このビデオクリップでは、レーザー光線による3Dスキャンを行い、収集した3Dデータからビデオ化した。
 米Velodyneのレーザースキャナ装置により、64本のレーザー光線が1分間に900回、360度にわたってスキャンし、そのデータを米Geometric Informaticsが3D化した。

ビデオはGoogleの以下のサイトにて,PVとメイキングビデオの2本の動画が公開されている。

RA DIOHEA_D / HOU SE OF_C ARDS
http://code.google.com/creative/radiohead/

このようなレーザースキャナー装置は,主に斜面や構造物の詳細な3次元形状を測量するために用いられる。地上型レーザースキャナ,または地上型レーザ測量と呼ばれる。地上だけでなく,航空機に搭載するレーザースキャナーもある(私は航空機のほうのレーザスキャナを用いた研究を行っている)。

仕組みとしては,レーザースキャナ装置から,1秒間に数千発のレーザーがパルスとなって周辺にたくさん照射される。そのパルスが地物に反射して装置まで戻ってくる時間を計測し,時間から遠近を把握する。そして,各パルスがどの角度や方向に照射されたのかを把握しておく。そうすることで,装置からレーザーが照射可能な範囲において,詳細な3次元形状が再現できるのだ。

さらに,ずっと装置からパルスを照射し続けてデータを取得し,動画のように見せているところが非常に興味深い。特にPVの最初のあたりで顔の形状が表現されているところである。測量では,同じ対象を長時間にわたってパルスを照射することあまりないだろう。というのも,動くものは測量の対象とはならないからである。ほかにも,装置自身をぶれさせて移動させて取得した形状を乱れさせたり,水の膜を用意してパルスを反射させなくしたりと,測量での用途では考えられない使い方をして遊んでいることも,とても興味深い。

レーザースキャナー装置の用途して主流になるとは考えられないが,こういう使い方を着想する柔軟さや,目の付け所の良さに感心する次第である。

最も国民の認知度の高い衛星である気象衛星「ひまわり」の後継機の予算を確保する見通しが立っていないらしい。

気象衛星が消滅の危機、「ひまわり」後継機に予算集まらず(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080705-OYT1T00454.htm

気象庁が6~8年後に打ち上げを予定している気象衛星「ひまわり」後継機2基の調達の見通しが立たず、30年以上も日本の空を宇宙から見守ってきた気象衛星が消えてしまうかもしれない事態に直面している。

現行2基の予算の7割を分担した国土交通省航空局が計画から外れることになったため、管理運用を含め1基400億円とされる予算の確保が気象庁だけでは難しいためだ。

以前,気象庁が考えている次期気象衛星についてエントリを書いた。やや批判気味に書いたのだが,民間の力を利用するという考えだったので,気象庁には予算が無いということは良くわかっていた。そして,本当に予算が確保できていないようだ。

以下に,いくつかの雑感を列挙する。

(1) 気象衛星は最も役に立った地球観測衛星である

一機400億円かかるとか,予算が取れる取れないは別にして,これまでの地球観測衛星の中で気象衛星はも最も役に立ってきた地球観測衛星の1つである。日本では,気象衛星の打ち上げ前は台風の接近の予想は富士山レーダー(1999年廃止)に頼るしかなかったが,気象衛星によって,はるか南の台風の発生をいち早く察知し,台風の進路の予測の精度が向上した。防災面での貢献は多大なものがある。

それだけでなく,数値予報へのインプットデータとしての貢献,気象現象の解釈にも使用される。世界的には,世界気象機関(WMO)が実施している世界気象監視計画へ参加しており,国際貢献にもなっている。

(2) 極軌道衛星は気象衛星の代替にはならない

最近は,だいち(ALOS)や,高分解能衛星写真を目にする機会が多くなっている。しかし,このような画像を撮影する衛星は極軌道である。気象衛星は静止軌道であるため,観測方法が全く異なっている。極軌道の場合は,地球の回りを回っているため,気象衛星のように一時間や30分に1度のような高頻度の撮影はできない。

(3) このタイミングには何か裏がある?

国の予算のことは詳しく知らないが,All aboutによると,来年度の予算の動きが始まるのが5月くらいのようだ。

概算要求、補正予算、復活折衝・・専門用語を解説! 予算についての基礎知識 (All about)
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20010904/index.htm

各省庁の各局の各「課」が、来年欲しい予算をまとめ、各局の予算関係を仕切る「総務課」に要求します。これが5月末くらいまで。総務課はこれをもとに局の予算要求をまとめ、各省庁の予算関係を仕切る「官房予算関係課(会計課)」に提出します。これは6月末くらいまで。これをもとに、各省庁が予算の要求を財務省にするのが8月末から9月あたまくらいまでです(これを概算要求といいます)。

この記事によると,5月から6月にかけては省庁内で予算要求が決まってくる時期である。気象庁は外局なので国土交通省との予算の関係がよくわからないが,国土交通省内での折衝か,財務省での折衝でうまくいっていないのだろうか。そのため,リークによる先制攻撃で予算獲得を有利に進める狙いがあるのかもしれない。洞爺湖サミットの主要テーマの1つに気候変動があるので,この記事が出るタイミングが良すぎる。

まさか,気象衛星が必要ないと考えている役人はいないと思う(そうあってほしい)ので,何か裏があるような気がしている。

(4) とにかく気象庁はこれから正念場

過去のひまわりの打ち上げの経緯を見ると,技術試験衛星であったり,運輸多目的衛星だったりと,現業では衛星画像自体は使われているが,単独で現業を目的とした気象衛星の打ち上げについては,行われていないのだ。

ひまわり8号に迫る危機 (MTSAT打ち上げを追う!)
http://mtsat.air-nifty.com/news/2008/02/8_0464.html

* ひまわり1号~2号:科学技術試験衛星だったため、科学技術庁が経費を100%負担(気象庁ゼロ%)
* ひまわり3号~5号:科学技術衛星だっため、科学技術庁が40-25%負担(気象庁60-75%)
* ひまわり6号~7号:運輸多目的衛星だったため、航空局が70%負担(気象庁30%)

今後の衛星は,国土交通省航空局が計画から外れ,技術試験衛星でもないということである。つまり,現業として気象庁が継続性を持って気象衛星を打ち上げる時期が訪れた,という解釈ができる。いろいろと水面下の攻防がありそうだが,とにかく気象庁は正念場を迎えているといえる。

関連記事
気象庁が考える次期気象衛星

7月になって地球観測衛星の話題が多く上がってきている。米国政府の商用高分解能衛星買取や,ウェザーニューズの小型地球観測衛星計画など。そして,JAXAから地球観測衛星だいち(ALOS)の(ほぼ)後継の話が出てきた。

JAXA:「災害監視衛星」打ち上げへ 風水害に対応 (毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20080705k0000m040083000c.html

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、大規模災害の被災状況を迅速に把握するため、2012年度に「災害監視衛星」を打ち上げる計画を、文部科学省宇宙開発委員会の部会で表明した。

 JAXAの構想によると、可視光や赤外線などの光学センサーを搭載した光学衛星と、曇天や夜間でも観測できるレーダー衛星のペアで構成。日本に多い風水害に対応するため、悪天候でも観測できるレーダー衛星を最初に打ち上げる。

 レーダー衛星の地上分解能は1~3メートルで、現在、災害時の観測に使われている地球観測衛星「だいち」のレーダーの数倍細かな物まで観測できる。また、データ処理速度も向上させ、受信から情報提供までの時間も現在の3時間から1時間以内に早める。

 開発費は、地上の受信設備なども含め約292億円を見込んでいる。

2機の運用で,合成開口レーダ,光学の順に打ち上げるようだ。だいちが行っている,被災地域の撮影&データ提供が実績として評価されているのだろうか。だいちの成果については,JAXAのサイトで以下のような資料がある。

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の成果
http://www.jaxa.jp/press/2008/07/20080701_sac_daichi_j.html

災害と言っても平常時が多いわけで,ALOSの後継機としてこの手の高解像度衛星画像が継続的にうちげられることは重要である。無事に打ち上げが認められることを期待したい。

ただし,別の衛星については,継続性が絶たれるピンチとなっている。それは次のエントリーで。

関連記事
気象情報会社ウェザーニューズが小型地球観測衛星打ち上げ計画を発表
商用地球観測衛星を軍用のスパイ衛星として買い上げを検討 (アメリカ)

最大手の気象情報会社であるウェザーニューズが,小型衛星を打ち上げる計画を発表した。温室効果ガスや海氷を観測するという興味深い計画である。

世界初!サポーターとともに実現する衛星 (ウェザーニューズ プレスリリース)
http://weathernews.com/jp/c/press/2008/080703.html

気候変動や地球温暖化に対する取り組みのひとつとして、超小型感測衛星「WNI衛星(仮称)」を2010年に打ち上げ、温暖化の原因となる温室効果ガスや、温暖化によって減少し続けている北極海の海氷などを企業や一般サポーターとともに感測するプロジェクトを開始します。本プロジェクトは、東京大学、千葉大学、アクセルスペース(※2)とともに研究・開発を進めており、従来の衛星では成し得なかった超小型衛星によるデータ感測を目指します。極域の画像を撮影し海氷を解析するとともに、衛星と世界各地に設置した感測機の間でのレーザー光の減衰を評価することで温室効果ガスを感測する斬新な方法を試みます。

興味深い理由としては,一般企業が計画する地球観測衛星であること,小型衛星であること,温室効果ガスの計測方法,参加型であること,が挙げられる。

(1) 一般企業が計画する地球観測衛星であり,衛星のみで儲けようと考えていない(?)ところ

地球観測衛星は,宇宙機関が打ち上げる場合と,一般企業が衛星写真の販売用として打ち上げる衛星,の2種類がある。前者だとNASAのLandsat,NASAと経産省のASTER等があるが,JAXAのだいち(ALOS)もこのカテゴリに入る。後者としては,GeoeyeのIKONOSやDigitalGlobeのQuickBirdやWorldView-1がある。プレスリリースを見る限りでは,観測データそのもので収益を得ようという雰囲気は伝わってこない。衛星のみで収益を得ようとしてないのであれば,それは低コストの小型衛星だからこそである。

(2) 小型衛星であること

小型衛星であることで,JAXAやNASAが打ち上げる衛星よりもはるかに低コストである。そうなると,もちろん失敗する可能性も高いかもしれない。ただ,失敗しても金銭的な損失は軽くて済むことになる。

また,プロジェクトにかかわる大学と企業に注目したい。特に,東大の中須賀研究室がかかわっている。中須賀教授は,小型衛星の打ち上げおよび運用の第一人者である。つまり,それなりにノウハウを持ったところとウェザーニューズは組んだことになり,衛星のプロジェクトを0からはじめる場合と比較して,開発は短期間で済み,成功の可能性も高いだろう。

(3) 温室効果ガスの計測方法

従来の地球観測衛星では,網羅的に地表面または大気を観測するのが普通である。しかし,この小型衛星では,観測のためには地上に機器を設置する必要があるらしい。この方法の原理がわからないので,精度がどのくらい出るのかが未知数である。しかし明らかなことは,地球温暖化の温室効果ガスの増加を議論するためには,網羅的な観測が必要不可欠であるため,機器の数と機器の分布が重要となる。ただ,低コストでそれなりの精度で温室効果ガスが計測可能というのであれば,従来の地上観測の点数と比べれば多くなるため,それはそれで有効な手段である。

(4) 参加型

温室効果ガスの計測のためには地上に機器を設置する必要があることを述べたが,これには機器の設置に賛同する人が大勢必要であることは言うまでもない。そこを企業・学校・一般サポーターによる「参加型」とすることで,機器の数を稼ぐ計画のようだ。参加者は,もちろん機器のコストがゼロに近いことが望ましいだろう。

地球観測衛星の計測に参加型を組み合わせるというのは,はじめてのアプローチであろう。トップダウンの衛星による観測と,ボトムアップの計測を繋ぐ新しい試みといえる。

まとめ

今までの地球観測衛星は,トップダウン的で最大公約数な機能を持った衛星が多かった。しかし,低コストな小型衛星が主流になれば,特定の目的のために必要な地球観測衛星が計画され,運用される可能性が高くなる。そうなると,リモートセンシングの分野は次のステージに進むことができるのではないだろうか。

なんと,スパイ衛星は軍内で開発,打ち上げ,運用を一貫するのかと思いきや,商用の衛星を買ってスパイ衛星としてしまう計画があるらしい。アメリカでの話しだが。

米国防総省、民間偵察衛星を軍用のスパイ衛星として買い上げを検討(Technobahn)
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200807011848&page=2

米国防総省が民間偵察衛星を買取り、政府専用のスパイ衛星として運用する方向で最終調整入りをしたことが1日までに明らかとなった。
(中略)
運用に伴う障害なども多く発生する状況となっており、多数の衛星網を維持するためには軍用のスパイ衛星並みの高解像度を持つに至ってきた民間の衛星を買い上げる方が安上がりと判断した模様だ。

民間から買い上げることで,自前のときと比べてインテリジェンスのパフォーマンスが落ちなのであれば,買い上げることはかまわないと思う。買い上げた場合,オペレーションは委託された民間が行うのだろうか...。

途中まで民間向けに運用されていて,運用の途中で軍( or 政府)所有になって,民間が使用できなくなる可能性はないのだろうか。民間の商用高分解能衛星画像を提供する企業は,世界的に見ても片手の指で数える程度しかない。それなりに研究や民間が活用している。それが軍の所有となって,入手機会が失われてしまうおそれは無いのだろうか。

平成20年5月2日から3日にかけて,ミャンマーを襲った大型サイクロンによる洪水被害が,衛星画像によって撮影され,JAXAとNASAにて公開されている。メモとしてリンクを以下に示しておく。

NASA Satellite Captures Image of Cyclone Nargis Flooding in Burma
http://www.nasa.gov/topics/earth/features/nargis_floods.html

NASAの衛星画像は,光学センサを使ったものである。光学センサの場合は,直感的に判断しやすいが,雲に覆われたら地表面は見えない。これから東南アジアは雨季に入るため,雲に覆われて光学センサで地表面が見えないこともしばしば。

ミャンマー・サイクロン洪水被害
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2008/tp080508.html

JAXAの衛星画像は,光学センサとは異なる電磁波の波長帯を使っている。そのため,雲の影響を受けずに地表面を見ることが可能だ。洪水の場合は比較的把握しやすい。

Yahooが昭和30年代の古い地図の公開をはじめたり過去と現在の空中写真が比べられる書籍を紹介したが,goo地図が東京23区の昭和30年代の空中写真を公開をはじめた。しかも無料で。

NTTレゾナントは19日、「goo 地図」において、昭和38年に東京23区で撮影された航空写真をスクロール地図上で無料公開した。翌39年開催の東京オリンピックに向けて建設中の代々木体育館や首都高速道路などの様子がわかるという。

昭和38年の東京23区内の航空写真、「goo 地図」で無料公開 (Internet Watch)

というわけで早速goo 地図を訪れてみた。「古地図」というタブをクリックすることで,昭和38年の空中写真に切り替わる。当然モノクロである。昔の地図は古地図と呼ぶが,昔の空中写真=古地図というのはちょっと違和感がある。だが,考えてみると「古地図」のように,過去の空中写真を1つの単語で言い表す適切な言葉が無い。

ざっと古地図を眺めてみると,23区の周辺も含まれている。例えば,23区の南側は川崎市だが,武蔵小杉なども入っており,外側もある程度の範囲で含まれていることが分かった。東側では,浦安市の一部が含まれている。特に興味深いのは,東京ディズニーランドのあたり。

goo_map_3comp.png

この図は,昭和38年空中写真と最新地図の比較である。ディズニーランド付近は昭和38年は埋め立て工事すらはじまっておらず,砂浜または海だったことがわかる。ディズニーランドの北側の住宅街も,砂浜だったようだ。他には,羽田空港も埋め立ての規模が全然違うのでおもしろい。

goo地図への要望としては,地図のウインドウを横に並べるようにして,過去の空中写真と最新の地図や空中写真を比較できるようなインターフェイスも作って欲しいことである。

なお,goo地図は上記Impressの記事によると,戦後間もない頃に撮影された米軍撮影の空中写真も,2008年4月以降に公開予定とのこと。これも期待できる。古い地図や空中写真の公開に関しては,gooがYahoo!よりもリードした形となった。

過去の地図や空中写真に関しては,

http://www.tagchan.net/blog/2007/11/post_56.html
http://www.tagchan.net/blog/2008/03/yahoo_old_map.html
http://www.tagchan.net/blog/2008/03/past_aerial_photo.html

で述べているように,積極的に公開していくべきであると主張してきたが,意外と早い時期に,誰でも容易に閲覧またはアクセスできる時期が到来しそうな予感がする。

最近,Amazonのウィッシュリスト(改め,欲しいものリスト)が話題になっていたので,久しぶりにアマゾンにログインしてみたところ,今回紹介する本がリストアップされていた。なぜリストアップしたのかは覚えていないが,せっかくなので購入してみた。

東京変貌―航空写真に見るこの50年の東京 1958 2006
「東京変貌」プロジェクトチーム
幻冬舎メディアコンサルティング (2007/10)
売り上げランキング: 76358


タイトルで分かるように,約50年の東京23区の変化を空中(航空)写真で見るという,非常にシンプルな内容である。本を開くと,左ページが1958年の空中写真,右ページが2006年の空中写真である。これがだいたい50シーンくらいある。台場の埋立地の変化,新宿西口の浄水場から高層ビル群への変化,恵比寿のビール工場からガーデンプレイスへの変化など,一目瞭然である。各シーンで説明の文章は一文か二文程度。写真を見ればわかるのである。それだけの情報量が空中写真には含まれている。

過去の地理空間情報の重要性については,

http://www.tagchan.net/blog/2008/03/yahoo_old_map.html
http://www.tagchan.net/blog/2007/11/post_56.html

などで言及しているが,現状では過去の情報に触れるには結構なコストがかかる。当然のことながら,Google MapsやYahoo! 地図では「最新」の状態しか見ることができない。こういう本を通して,過去の様子を容易に知ることができることは,非常に意義があると思う。そして,カラー空中写真のページが50ページ程度あって,これで1400円はお買い得であると断言できる。

この本について注文をつけることは,当時の地形図などの地図が欲しい。また,アマゾンの書評に書いている人がいるが,東京23区だけでなく,郊外の都市,農村など,色々なところに着目して,過去と現在を比較するシリーズを出して欲しいと思う。

ちなみに,この本の空中写真は,国際航業が関係したようだ。また,2006年の空中写真は,Google Mapsで使用されているのとまったく同じ写真も多数あるようだ(2008年3月13日現在)。

やはり,このような過去からの空中写真や地図については,全てデジタル化し,誰もがアクセス可能な形で公開される流れになって欲しいと思う。

最近当ブログで取り上げている気象衛星だが,これのブログパーツを作成してみた。天気関係のブログパーツだと,天気予報や降雨レーダなどが登場している(リンク)。しかし,気象衛星関係は見当たらなかった。特に役に立つわけではないが,見た目も多少はおもしろいので,使う人がいてもおかしくないとは思っている。

実は2月に入ってから,当ウェブサイトの右側の下に表示させてあるのが,気象衛星画像ブログパーツである。一応,別ページも用意した(リンク)。画像は,東大生研にあるWebGMSを利用している。また,画像を切り替えるようにしてあり,いつ撮影された画像なのかも分かるようになっている。

そして,貼り付けるコードは以下の通り。なお,コード内に「window.onload」を使っているため,bodyタグでonloadを使っている場合は,Latestをクリックしないと画像が表示されないと思われるので注意が必要である。

<script type="text/javascript" src="http://www.tagchan.net/mtsat.js"></script>
<script type="text/javascript">
window.onload = function(){getmtsatJSON(0);}
</script>
<div style="background-color:azure;border-style:solid;border-color:#125ebc;border-width:1px;font-size:11px;width:170px;padding:5px;">
<div align=center><b>気象衛星ひまわり<br>MTSAT画像</b><br>
<input type="button" value="&lt;-" onClick="prev()">
<input type="button" value="Latest" onClick="getmtsatJSON(0)">
<input type="button" value="-&gt;" onClick="next()">
<div id="mtsat_time"></div>
<div id="img_src"></div>
<br>by ERI/IIS/U-Tokyo/Japan</div></div>

以前のエントリーで,次期気象衛星についてコメントしたが,その後,気象庁で開催された次期静止気象衛星について検討する懇親会の資料がアップされた。

「静止気象衛星に関する懇談会について」気象庁
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/satellite/kondan/kondan_index.html

「資料1-1 静止気象衛星の現状と今後の展望」には,次期気象衛星のスペックが示されている。それによると,可視光が3チャンネル(バンド),近赤外が3チャンネル(バンド),赤外が10チャンネル(バンド)を予定しているらしい。また,空間解像度は可視が500m,近赤外+赤外が2000mとなる予定としている。また,10分間隔の観測頻度となる予定である。このバンド構成と観測頻度は,陸域観測に有効であろう。

このほかに,資料を見ていて気になった点がある。それは,気象庁は気象衛星の運用を民間に任せたいと思っているようなのだ。

「資料1-2 今後の静止気象衛星の整備・運用に向けた課題」において,3つの論点が挙げられている。それは以下の通りとなる。

  1. 静止気象観測ミッションと他のミッションの相乗りの可能性は?
  2. 気象衛星観測の高機能化により、気象業務への利用以外に、新たな利用は見込まれるか?
  3. 気象衛星の整備・運用において民間活力を活用することは可能か、その場合どのような方法が適当か?

まず,1つ目の「相乗り」の可能性については,資料1-2のスライド2枚目に説明されている。そのなかで「複数の機能を搭載した衛星は,個別に衛星を打ち上げるより経済的」としている。要するに,別の機能を搭載させたい機関を探し,予算を分担させて打ち上げて,コストを抑えるということである。

2つ目の「新たな利用」については,従来より高頻度で,高波長分解能,高空間分解能になることで新たな利王が見込める,としている。

3つ目の「民間活力」については,7枚目のスライドを見れば一目瞭然。気象庁はデータを受け取るだけで,衛星の運用を外に任せたいと考えているようなのだ。

これらの論点を総合すると,
「われわれ気象庁はお金がないから,次期気象衛星をできるだけお金をかけない形とし,打ち上げと運用をできるだけ民間に任せていきたいです。センサーがよくなるわけだから,民間で新たな利用用途が見込めるでしょ?」
と受け取ることができる。


衛星に複数のミッションを搭載(相乗り)する点については,多くのセンサーを搭載して1年も経過せずに失敗した,ADEOS(みどり)やADEOS2(みどり2号)の失敗が参考になる。1つのミスで複数のミッションが影響しないよう,比較的小型な衛星を打ち上げる考え方が出てきているが,その辺は気象庁はどのように考えているのだろうか。メリットとデメリットがあるはずなので,その辺を検討して提示すべきである。

利用用途については,研究用途向けに非常に興味深いデータが取得できると期待できるが,民間がこれを使って儲けることは不可能だろう。MODISやAVHRRのような,次期気象衛星の空間解像度とほぼ同等な500m~1000m程度の空間解像度の地球観測衛星が,商業的に利益を上げている事例を聞いたことがない。観測頻度が高いことは魅力的ではあるが,現実的には空間解像度が数メートル以下のデータでしか収益を上げていない。おそらく,それでも利益は出ていないのではないか。

「民間活力」については,これでは民間任せにしてユーザになります,と言っているようなものだ。防災上重要な位置づけであり,国民からの認知度が極めて高い気象衛星を,民間任せの運用にして良いものか。しかも,気象衛星による観測は日本だけでなく国際な枠組みがあって,データが全世界に流通しているのだ。

上記URLに掲載された議事概要によると,出席した委員からかなり厳しい意見が出たことが伺える。委員から出たコメントで,注目すべきコメントを3つ挙げておく。基本的に,以下のコメント(意見)に賛成である。

静止気象衛星は社会基盤の核となるものであり、国民の安全・安心に直結するものである。さらに、国際的に果たす役割も大きい。このように我が国にとって重要なものであるから、国の責務として次期静止気象衛星の整備に取り組んでいく必要がある。

総合科学技術会議で取りまとめられた「地球観測の推進戦略」においても、根幹的な観測は国が責任を持って行うべきこととなっている。国でしかできない部分、民間に任せることのできる部分を明確にしていく必要がある。

気象業務の目的以外での衛星データの新たな利用を探る場合、新たに得られる観測データ・情報に魅力がないと使いたいとは思われない。このため、新たな観測データ・情報によってどのようなことができるのか、具体的な事例などにより分かり易く示すことが必要である。

気象庁の予算が少なく,気象衛星の業務に関する予算の割合が多いのは良く分かっている。しかし,今回の気象庁が提案している次期気象衛星の方向性は,ちょっと無理があると思う。

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