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研究 Archive

ソーシャルメディアが地震防災研究に貢献できるか?

阪神淡路大震災から15年ということもあり、地震関係の話題をよく目にする。流行もので大変恐縮だが、Twitterに代表されるソーシャルメディアが地震防災研究に貢献できる可能性について考えてみたいと思う。ここで「地震防災研究」としているのは、実際に地震防災に役に立つ手段なのかが明らかにされておらず、有効性を評価するための研究が必要だからである。しかし、以下の2つの項目に記した文章から分かるように、研究ができる下地は整っており、地震防災研究へ貢献できる可能性は十分にあるといえる。


・地震予知の研究にソーシャルメディアは使える?

毎日新聞のサイトで以下のような記事を発見した。

地震:異常現象を予知に生かそう 関西の産学が本腰(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20100106k0000e040069000c.html

空が赤く光るといった地震前の非日常的現象の情報を集め、地震予知に生かそうという取り組みが今月から始まる。科学では分からない「未科学」の部分を解き明かそうという試みで、「関西サイエンス・フォーラム」(会長=秋山喜久・関西電力相談役)が計画した。京都大や大阪大などの地震や気象、生物等の研究者約30人が参加、一般からの情報も募る。

国は、このようなタイプの研究は行わない立場であるが、大学などの研究機関がこういう研究を行うことは意義がある。「未科学」という言葉が新鮮である。さて、この研究を意味のあるものにするためには、異常現象である可能性がある情報を数多く収集することである。当然のことながら、モバイル端末や携帯電話による一般からの情報は、重要なウェイトを占めるだろう。

こういうものこそTwitterのようなソーシャルメディアが活用できる。タグ付けして写真を撮影するなり文章を、簡単な住所と共にTweetすればよい。iPhoneならTwitterクライアントであれば、自動的に位置情報をつけることもできる。大きな地震がいつ起きるか分からないため、情報を募る期間が読めないという問題点はあるが、上記の方式で情報を収集するコストは、プラットフォームができているので、ほとんどかからないため、やってみる価値はあるのではないだろうか。


・被害などの情報の集約にソーシャルメディアは使える?

アメリカでは、USGS(地質調査所)が、Twitterで地震の情報を収集できるかどうか研究を行っているというニュースを発見した。

アメリカ地質調査所,ツイッターを活用した地震情報収集システムを実験(メディア・パブ)
http://zen.seesaa.net/article/137775957.html

アメリカ地質調査所はこれまでも世界各地で頻発している地震を速報しており,RSSフィードでも時系列で配信している。世界中の限りあるセンサーからのデータをもとに地震発生地を検知していた。ところがこのTED( Twitter Earthquake Detection)では,これまで違って人によるコメントや写真などの情報が地球上のあらゆる場所から集められる。 "earthquake"とか"tremor"のようなキーワードを含むツイートを収集していけば,膨大な情報が集まるようになるだろう。2008年7月の南カリフォルニア地方で起こった地震では,携帯電話の通話が滞ることがあったが,SMSやモバイルアプリ経由のツイッターがかなり使われたという。緊急時のコミュニケーションツールとしてもツイッターは定着していきそうだ。

報道機関や行政機関などは、被害の迅速な把握が必要だが、ソーシャルメディアによって蓄積される情報が役に立つ可能性がある。ノイズが多いことが予想されるが、位置情報が付与され、地震に関するキーワードで検索するなり、決められた(どのように決めるのかは課題)ハッシュタグを付けることで、必要な情報を抽出できる可能性が高い。

大地震が発生すると通信網が遮断される可能性があるため、このような仕組みがうまく働くのかは未知数である。ただ、前述したように、このような可能性を明らかにするための研究にかかる費用は、すでにTwitterなどのプラットフォームはできているため、少なくて済むのである。大きな地震は発生して欲しくないのだが、大地震のような大規模災害が発生した際には、ソーシャルメディアの可能性および有効性を評価してみたいと思ったりしている。

【報告】2009年度からの所属について

  • Posted by: tagchan
  • 2009年4月 1日 22:34
  • 研究

先月の3月23日に学位記授与式が行われ,博士課程を修了しました。学位は博士(工学)です。学位記はこちらです。

2009年度からは独立行政法人防災科学技術研究所で,契約研究員として勤務します。所属は防災システムセンター 災害リスク情報プラットフォームプロジェクトです。

当サイトやブログで発言してきた位置情報を中心とした内容は,研究プロジェクトにも生かせる部分があると考えています。研究内容については,今後少しずつ紹介できればと思っています。


さて,話が変わりますが,職場がつくばなので,これを機に一人暮らしを始めました。住まいはつくばエクスプレスの南流山駅の近くです。そして,生活を荒んだものにしないために,生活日誌を付け始めました。

tagchanの生活日誌
http://d.hatena.ne.jp/tagchan/

なお,当サイトとブログは,引き続き同じテーマ+防災・災害関連で続けていくことになると思います。


学生生活から社会人生活へと移り,研究者としての人生が新たにスタートしました。研究者の道はけもの道であり,今後どういう人生を歩むのかは分かりません。ですが,しっかりとやっていければ,次の道は必ず開けると信じています。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

【研究紹介】既存の航空写真を使って過去からの森林の成長を再現

自分の行ってきた研究を,多くの人に平易な言葉で説明できるようにしたいと考えている。それは,研究成果の社会還元のために重要だと考えたからである。つい最近出版された自分の論文を紹介したいと思う。

  1. やったことを一文で説明すると・・・
  2. 「これまで撮りためてきた航空写真(空中写真)を使って,過去40年間の森林の変化や成長が再現できることが明らかになった。」

  3. 航空写真(空中写真)について
  4. 航空写真は,地図作りの目的のために,日本全国を戦後から定期的(森林域ではほぼ5年おき)に撮影してきた。そのため,航空写真は膨大な枚数の蓄積がある。この蓄積を生かすことできれば,新しい情報を生み出せる可能性がある。このような視点で航空写真を使うことはほとんどなかった。

  5. 航空写真を使って立体視
  6. 航空写真は,先ほど書いたように地図作成を目的として撮影されている。そのため,等高線が必要であり,地形のデコボコを把握するために立体視ができるように撮影される。立体視とは,写真のような2次元の画像を複数枚使うことで,物を3次元(立体的)に見る方法である。そのため,同じ地点でも複数の航空写真で写るように撮影されている。

  7. 樹木の凸凹の変化だけ抽出
  8. 森林や山の中を撮影した航空写真を使って立体視をすると,どんな凹凸が見えるだろうか。それは,「地形+樹木」の凹凸である。樹木は,成長すると上に高くなっていく。つまり,同じ森林で,40年前に撮影された航空写真の凹凸と,最近撮影された航空写真の凹凸を比較すれば,地形の凹凸が変化していないとするならば,樹木の成長による凹凸の違い,要するに樹木が高くなっていくことが把握できるはずだ。

    fig1.jpg

  9. 樹木の凹凸を抽出
  10. 航空写真から,地図作成のために立体視をしてきたが,人の手によって行われてきた。しかし,これでは時間がかかる。最近では,コンピュータの発達や,この分野の発展により,半自動的に凹凸が抽出できる技術が確立しつつある。そのため,この技術を使って,8時期約40年間の航空写真を50枚以上使い,8時期の凹凸を抽出した。そして,地形の凹凸である地盤高のデータを使って,樹木の凹凸のみを抽出した。この樹高の凹凸の時系列変化を観察することで,森林の変化が把握できるのかを調べてみた。

  11. どんな結果が得られたか?
  12. 最新の航空写真については,最新の測量技術であるレーザ測量の凹凸と比較して,樹木の凹凸は樹木の高さが十分に抽出できていることが確認された。

    そして,8時期の樹木の凹凸を観察したところ,樹木の成長が把握できた。また,樹種や地形による成長の違いが把握できた。他にも,伐採されたところや,植林された所が把握できたり,倒れた被害の発生したところが,凹凸で表現されていた。

    以下に樹木の凹凸を地図化したマップを示す。黒いほど樹木の高さが低く,白いほど高いことを示している。1960年代や1970年代は,南側は黒っぽいことがわかる。ちょうどこの頃に,植林が活発に行われ,その後は順調に成長していることがわかる。

    fig2.jpg

  13. どんないいことがあるの?
  14. 樹木の凹凸として樹木の高さが分かれば,林業を行っている森林では,木材の体積を知ることが重要であるが,これを時間変化として知ることができる。これまでも,森林のこのような情報を自治体が把握してきたが,精度に問題があるという指摘があった。そのため,航空写真を使えば,人間の調査が行けなかった場所でも,今回抽出できた情報を使うことで,精度を高められる可能性がある。また,伐採とか植林の確認もでき,倒木箇所の把握もできるので,森林管理の効率化に貢献できることが期待できる。

    また,バイオマスや貯蔵されている炭素の量が分かるようになる。そして,時間変化がわかるので,その情報を使って,森林の将来の森林の予測を行うこともできる。そうなれば,温室効果気体である二酸化炭素の吸収量の予測や,炭素の貯蔵量の予測も高精度に行える可能性がある。

  15. 掲載論文
  16. 田口仁,遠藤貴宏,古川邦明,沢田治雄,安岡善文,(2009)「多時期の空中写真から作成したDigital Canopy Modelによる森林キャノピーのモニタリング」写真測量とリモートセンシング, Vol. 48, No. 1, pp. 4-11.


というわけで,自分の研究成果を分かりやすく説明することを試みた。正直なところ,どんな書き方が良いのか模索している段階である。今後,いろいろと研究成果を発表していくと思うので,試行錯誤しながら,行ってきた研究を誰もが理解できる形で紹介できるようにしていきたいと思っている。

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