地図の最近のブログ記事

FOSS4G Advent Calendar 2011に参加したので久々にブログ更新(26日担当)。ここは個人のブログですが、現在、自分が「仕事で」開発を担当しているWebGIS「eコミマップ」を紹介したいと思います。(このエントリは「です」「ます」調。)

1. eコミマップの概要
背景とか理念とか書き出すと文章長くなって時間も無いので省略しますが、eコミマップは防災科研が開発しているオープンソースのWebGISです。FOSS4Gのプログラム群を基盤に機能を拡張して作っています(一番基盤となっているのがGeoserverで、PostGISとかOpenLayersとか、いろいろ使っています)。ライセンスはGPLで無償公開しています。なので、特に申請なども必要なく、商業利用も可能です。ダウンロードはこちらから。

特徴は、OGCのオープンスタンダードで公開されている地理空間情報の流通の仕組み(WMSやGoogleのKMLなど)に基づきデータを取得して重ねて表示することができ、そして、それらを下敷きに自分で情報を登録して地図が作成して印刷出力ができ、作った地図をさらにOGCオープンスタンダードの方式で二次配信できます。

開発して3年ちょっとで、これまで開発した機能を数えたことはありませんが、ざっと以下のような機能があります。

・外部の地図データ(WMS、KML、TMS系など)表示機能
・情報登録機能(写真やドキュメントの張り付けも可能)、登録情報管理機能
・住所によるジオコーディングを使った情報登録機能
・IDとパスワードによるレイヤとマップの管理機能
・印刷機能(PDF出力機能)
・空間および属性検索機能、空間分析機能(一部のみ)
・メモ描画機能
・携帯電話、スマートフォンによる閲覧および情報登録機能

マップのみのウェブサイトですと、多目的に使いづらいので、CMSやグループウェアとの連携を念頭に置いています。防災科研ではeコミグループウェアというPHPベースのグループウェアを開発しており、グループウェアのユーザ権限の連携が可能です。(ちなみに、DrupalやWordpressと連携するためのAPIおよびパーツの開発を今年度行っています。)

防災科研なので、これらの機能を使って、防災マップの作成や災害対応に活用してもらいたいと思っています。ただ、このシステムは用途はかなり汎用的なものですので、環境とか防犯とかいろいろなことに使えます。

2. 導入事例
平時の防災活動といしては防災マップコンテストを開催し、そこでeコミマップを使いました。2010年度のコンテストの作品は公開しています。eコミグループウェアからeコミマップを呼び出して使っています。

東日本大震災では情報集約および恊働を呼びかけるために構築したALL311において、各機関が公開している地図のマッシュアップに使用しました。日本地理学会が津波被災マップの公開のためにeコミマップを使いました

また、宮城県社会福祉協議会がeコミを使ってボランティアセンターのサイトを運営し、ボラセン運営のために一部非公開で地図を活用しています。詳しくは私が災害情報学会で発表したスライドをご覧ください。

さらに、東日本大震災で被災した自治体(陸前高田市と大槌町)については、罹災証明書の発行を支援しました。また、釜石市ではがれきの撤去管理支援にも活用されました。これらについては、地理情報システム学会で発表したスライドをご覧ください。

こんなこともあって、eコミマップは地理情報システム学会の学会賞(ソフトウェア部門)を受賞しました。また、宮城県社会福祉協議会からは表彰を受けました

3. 導入のためには?
ソフトウェアは無償なので、あとは以下のことを考える必要があるでしょう。

a. サーバ環境
Redhat系で動作確認しています。なので、CentOSが入っているさくらのVPSで動くと思います(人柱募集)。推奨はメモリ4GB以上なので、月々4000円のコースでしょうか。なお、eコミマップは中に複数のサイトを構築し、外部の複数のサイトと連携できるので、それほどたくさん環境構築する必要はないことが特徴です。

b. セットアップやメンテナンス
セットアップはマニュアルがありますが、バージョンアップなども考えると、Linuxがわかるシステム管理者を置いてサーバ管理ができる必要があるでしょう。ただ、地図管理画面が充実しているので、インストール後の運用はGISが分かっているサイト管理者がいれば、問題はないです。実際のユーザは管理画面を使わずにeコミマップを使用できるようにしています。

c. 背景となる地図は?
例えば、基盤地図情報25000WMS配信サービスが使えるでしょう。歴史に興味が有る方は、農環研さんの迅速測図も使用できますね。負荷が心配ですが...。さらに、現在開発中(年明け公開予定)なのですが、Googleマップを背景に使えるようにします。ただし、地図タイルのリクエスト数の多さによる課金の心配がありますし、印刷制限があります。他には、OpenStreetMapのタイル方式にも対応させる予定です。噂によると、来年度は国土地理院が電子国土の地図画像をほぼ標準的なタイル形式で公開するらしいので、それにも対応させたいと思っています。

4. 今後の開発予定は?
年明け公開準備しているのが、Shapeファイルのアップロードおよびダウロード機能があります。また、これまでは緯度経度の投影だったのですが、Googleマップで使用されているメルカトルに対応させます。それに伴い、すでに言及したようにGoogleマップとOpenStreetMapを背景地図に使用できるようになります。

別システムなのですが、Javaで動くデスクトップアプリケーション「eコミマップ印刷アプリ」を1月末までに公開する予定です。eコミマップから出力された専用ファイルを読み込みませることで、地図上に画像やメモ、吹き出しや矢印などが自由に配置できるようにします。

来年春にはeコミマップと他のウェブシステムを連携するためのAPI機能を実装して公開する予定です。先ほどDrupalとの連携について触れましたが、ユーザ認証やレイヤの管理や更新などAPIで行えるようにし、他のウェブシステムが連携しやすくします。また、iframeによる地図埋め込み機能もできるので、他のサイトにおいてブログパーツのようにeコミマップを使用できるようにします。

来年夏ころかもしれませんが、オフラインでeコミマップが使用できるする機能を公開予定です。Live DVDみたいなものが配布してハンズオンができればいいなあと思っていますが・・・。

5. 将来的なこと
eコミマップを広く普及させることはあまり興味が有りませんが、このオープンソースであることをうまく社会で活かして欲しいと考えています。最近の動きですと、NPOのDoChubuさんでは、eコミマップを使って防災マップなど地図作製の支援を事業として開始しました。朝日新聞にも紹介されています

長期的な展望はusuyu氏にお任せするとします。広い視野で展望できる時間的・精神的な余裕が全くありませんので。そうそう、国際展開のための多言語対応は必要ですね。

6. 目指すべきは地図データを互いに利用できる環境「分散相互運用環境」の実現

GoogleマップやGoogle Earthに代表されるように、GISは徐々に浸透してきていますが、様々な地図を簡単に重ね合わせたり、マッシュアップさせられる環境にはほど遠い状況です。その理由は、地図データが他の地図システムで活用しやすい方法で公開されていないからです。理想は、地図データを持つ機関が、責任を持って地図データを標準的な方式でインターネットで公開して、利用者はそれらをうまく重ね合わせてマッシュアップできる環境です。このことを「分散相互運用環境」といいます。技術的にはできていますが、社会の仕組みとして、これができていません。

東日本大震災では、被災後の国と民間の航空写真をWMSで公開し、ITS協会が公開していた通行実績マップのKMLをマッシュアップさせ、さらにゼンリン住宅地図や炊き出しマップや避難所マップ、津波被害エリアマップ(by 日本地理学会)などの地図データを重ね合わせることができる分散相互運用環境をeコミマップで実現させ、被災地で実際にボランティアセンターなどがeコミマップを活用して、災害対応に活用していました。現実には、このようなGISを活用できる環境は簡単に実現できないのが現状です。

Googleも被災後の衛星画像と通行実績マップをマッシュアップさせていましたが、これはGoogleのエンジニアがやらないといけない作業でした。このようなことは、本来はユーザ側で動的にできる必要があります。また、そのマッシュアップした地図の上にユーザが自分の情報を登録できる環境はありませんでした。我々はそれができるようにする必要があるのです。

7. さいごに
結局、勢いで背景とか理念の一部を最後に書いてしまいましたが、eコミマップは分散相互運用環境を実現するために生まれた地図ツールなのですね。永遠に開発途中のシステムです。もし、よければ使ってやってください。あと、開発者は随時募集中ですので、興味のある方はご連絡ください。
日本国際地図学会の定期大会(国士舘大学世田谷キャンパス)のシンポジウム「震災とジオメディア」で発表することになりました。 日時は8月10日の14時50分からです。ちなみに、非会員は2000円かかるらしいです。

職場での取り組みの発表となります。ALL311についてとなっていますが、防災科研の地図を使った情報支援全般について、紹介することになると思います。おそらく、パネルディスカッションになると思うのですが、シンポジウムの発表者として参加したことがないので、ちょっと緊張します。できればスライドは公開します。

さて、8月3日から6日は南紀白浜〜伊勢志摩あたりを車で巡る旅行にいってきます。行程は以下の通りです。


より大きな地図で 2011年8月3〜6日の旅程 を表示
東日本大震災前に投稿していた論文が応用測量論文集で公開されたので紹介。以前にもブログに書いたけど、地図をインターネット上に流通させる国際標準方式であるWMSで公開したことは、参加型マッピング(OpenStreetMap)にとって有効だったことを示した内容である。

ハイチ地震の際は、幾何補正済みの衛星画像をそれぞれの機関が、責任を持ってデータをWMSで公開したわけだが、それによって、データが即座に利用可能となり、必要なデータを必要な地理的範囲で動的に利用できることになった。そして、マッピングに参加した人は、マッピングに必要な衛星画像を切り替えながらマッピングを行い、迅速な基盤地図整備が実現したのである。

このように、それぞれの機関が地理空間情報を国際標準のような形式でデータ流通させて、互いに利用し合える環境を「分散相互運用環境」というのだが、それが役に立ったはじめての事例といえる。(この言葉、なかなか浸透しないので、某コマーシャルの低燃費→TNPのように、分散相互運用環境をBSUとでも名付けようか。)

田口仁,臼田裕一郎,長坂俊成,(2011)「大規模自然災害の対応支援のためのリモートセンシングデータ提供方法の一提案: 2010年ハイチ地震を事例として」 応用測量論文集, Vol. 22, pp. 53-63.
※ 論文のPDFは連絡いただければお渡しします。
そして、東日本大震災においても、このようはことは実現した。ハイチ地震のOpenStreetMapの事例は、外側からの支援であったが、今回は、現場の被災地の災害対応において役に立ったのである。そのためには、分散相互運用方式+WebGISという2つの要素が重要だったと私は認識している。この点については文章が長くなるし、私自身もまだ整理しきれていないので、今後しっかりとまとめていきたいと考えている。

最新の写真測量技術を使って、建物の3次元モデルを参加型で作成する試みがGoogleからはじまったので試してみた。豆腐のような壁面が無い3次元モデルではなく、壁面付きの3次元モデルが簡単に作成できる。

Googleビルディングメーカーでは、斜め写真などの大量の航空写真(空中写真)を使い、その写真から建物の3次元構造(輪郭線)がどのようになっているのかを、マウスを使って教えてあげるだけである。これらの航空写真を撮影したカメラは、どこでどの向きで撮影したのかは撮影時点で計測しているので、複数の写真で、特定の建物がどういう輪郭線であるのかをインプットすることで、建物の輪郭線が現実世界の3次元地理座標と対応をとることが可能となる。それによって、3次元モデルが作成可能となる。

以下が、建物の輪郭線が写真でどのように表現されているのかを示している様子である。直方体だけでなく、屋根のような形状との組み合わせも可能である。

zu1.png

このシステムでは、6枚から8枚くらいの航空写真を利用しているが、写真の枚数が多くなればなるほど、その3次元モデルの位置や高さの情報の誤差が少なくなる(もちろん、ユーザ次第で精度は変わるが、致命的なミスは減る)。また、斜め写真ということで、建物壁面の画像を切り出して、3次元モデルに貼り付けることが可能となる点が大きい。通常の地図作成の場合は、2枚の写真による立体視なので、壁面が写っていない場合も多いが、斜め写真を使うことで、その問題は解決する。

以下が、完成した3次元モデルである。かなりいい加減に作ったが、それっぽい表現になっていることがわかる。

zu2.png

斜め写真を複数撮影し、写真測量を行う技術としては、アメリカのピクトメトリー社という航空測量会社が国際航業と提携したことが知られている(リンク)。Googleがこの企業の技術を用いたかどうかは不明だが、この方法と大差無いだろう。

これにより、コストと時間をかけて正確な3次元モデルを作るアプローチ(従来型)と、質は劣るが大量にそれっぽい3次元モデルをユーザが作るアプローチ(参加型)の2種類によって3次元モデルが作成可能となったわけである。2つのアプローチを併用しつつ、広範囲で3次元の地球がサイバースペースで再現できるように、うまく進めて欲しいものである。

日本全国の地震動マップを推定して結果を公開するシステム「地震動マップ即時推定システム(QuiQuake: Quick estimation system for earthQuake map triggered by observed records)」が公開された。(個人的に)注目すべきは、WMSで配信していることである。専門家が配信するこのような地理空間情報を、WMS配信することで、複数のソフトウェアによってユーザが動的に表示して、他のデータと重ね合わせることが可能となる。

ウェブサイトの概要によると、データの種類は2つあり、震動による最大地動速度(PGV: Peak Ground Velocity)と計測震度がある。また、データはGeotiffでも公開している。データは、KMLで公開されているが、KMLからWMSを使ってGoogle Earthで表示することが可能である。しかし、WMSはGoogle Earthのみで閲覧するわけではないので、WMSのURLを調べてみた。

2009年10月18日時点でこのサービスで最新の地震のKMLをダウンロードしてみる。KMLをテキストエディタで開くと50行目に以下のようなURLがある。

http://carteb.geogrid.org/mapserv/qqm?LAYERS=PGV_20091011101200&TRANSPARENT=true&FORMAT=image%2Fpng%3B%20mode%3D24bit&SRS=EPSG%3A4326&SERVICE=WMS&VERSION=1.1.1&REQUEST=GetMap&STYLES=&EXCEPTIONS=application%2Fvnd.ogc.se_inimage&WIDTH=1024&HEIGHT=1024&

「LAYERS=PGV_20091011101200」が、データのIDにあたり、2009年10月11日10時12分の地震ということをあらわす。この長いURLがWMSのURLであり、Quantum GISでも表示可能である。以前のブログで紹介した方法で、Quantum GISで表示してみた。凡例はこちら

図1.png

2つのマップを並べたが、同じエリアを切り出したものである。左側はGeography Network JapanでWMS配信している数値地図25000である。場所は、根室半島付近である。震源は、これより南東にあるのだが、必ずしも震源からの距離によって揺れが大きくなるわけではなく、地形によって変化する。地形から判断すると、湿地と推測される箇所が揺れやすくなっている。このように、地形による地震動の違いも判別できるデータである。ただし、WMSではPGVは見ることができたた、計測震度のデータは公開されていなかった。ぜひとも計測震度もWMSで配信して欲しいと思う。

上記のURLは、個別の地震だった。次に、リストから地震を選ぶようにしてみよう。以下のWMSのURLを入れて見る。

http://carteb.geogrid.org/mapserv/qqm?

すると、現時点で1996年以降の4992個の地震の地図がリスト表示されて、選ぶことができるようになっている。日付で選べるようになっており、大きな地震の日付と時間を調べておけば、その地震の地震動のマップが表示できる。以下のマップは、2009年8月11日早朝の最大震度6弱の地震の最大地動速度マップである。

図2.png

自分の住んでいる地域と他の地域の最大地動速度を比較してみると、自分の住んでいる場所の揺れやすさが見えてくるかもしれない。

GDALのプログラム群のひとつである、gdalwarpを使うと、ラスター型(メッシュ)のGISデータの接合が簡単にできるので自分へのメモを兼ねて紹介したい。

国土地理院の基盤地図情報ASTER GDEMなどで公開されている地盤高データ(Digital Elevation Model; DEM)は、タイル状に分割されて公開されている。そのため、境界部を対象にする場合や、広域な利用を考える場合は、データを接合する必要がある。

基盤地図情報については、以前のエントリでラスター型GISデータへ変換できることを紹介した。先日公開がはじまったASTER GDEMはGeotiff形式のラスター型GISデータとして公開されている。これらのデータは、GDALのgdalwarpを使うことで、簡単に接合処理ができてしまう。

gdalwarp ファイル1 ファイル2 出力ファイル

ファイル1とファイル2をつなぎ合わせたものが出力ファイルに保存される。大量のファイルの場合は、アスタリスク"*"を使いワイルドカードによって大量のファイルを指定することができれば、大量のタイル状のファイルを接合することができる。つまり、

gdalwarp ワイルドカード付きのファイル 出力ファイル

とすることで、大量のタイルを接合することが可能となる。

今回、基盤地図情報の10mのDEMを以前エントリの方法でラスター型GISデータへ変換し、gdalwarpで接合した。以下に接合後のファイルを示した。

dem.jpg

新しいGoogleストリートビューの新機能にパンケーキというものがある。これは、マウスカーソルが道路上では円なのだが、建物の壁面では、壁面の存在や向きを考慮したカーソルの形状となる。これは、ストリートビューが3次元空間を認識していることに他ならない。高度な処理を施している可能性があり、今後この技術と3次元情報が面白いことに活かされる可能性もある。

パンケーキについての説明は、以下が参考になる。

Google「ストリートビュー」で素早い移動が可能に (Internet Watch)

今回導入されたスマートナビゲーション機能では、マウスカーソルを画面の道路部分に乗せると、円盤状の図形が表示される。Googleではこれを"パンケーキ"と呼んでいる。パンケーキを自分の進みたい場所に動かし、そこでダブルクリックすると、即座にその場所にジャンプできる。パンケーキは道路のかなり先の方まで表示されるため、瞬時に移動できるようになった。

 さらに、道路の両側などにある建物にマウスカーソルを動かすと、パンケーキは四角形に変わる。そこをダブルクリックすると、建物の壁面をちょうど見やすいように表示してくれる。

実際に試してみた。道路上などの平面では円のマウスカーソルである。そして、建物にマウスカーソルを移動してみた。

建物壁面の向きを考慮して、マウスカーソルの形状が四角になって傾いている。そして、壁面の向きが変わると、それも考慮したマウスカーソルの形状となる。従って、道路に面した壁面とその側面となる壁面の位置と向きを認識していることがわかる。

gsv1.jpg

gsv2.jpg

これの意味するところは、Googleストリートビューの2次元画像から、3次元空間を関連付けることを可能にしているということであり、Googleストリートビューは3次元空間を認識しているということである。どうやっているのだろうか。おそらく、写真から3次元空間を構成させていると考えられる。

ストリートビューでは連続して写真撮影しており、複数の写真による立体視が可能であり、技術的には3次元空間を構成させることは不可能ではない。ただし、写真の枚数は膨大である。そのため、自動処理を行って2次元の画像を3次元として構成するための処理を行っていると推測される。様々な箇所でパンケーキを試してみたが、電線の部分で壁面と認識するミスがあったり、マウスカーソルの形状が変わる場所がずれている場合があった。これは自動処理を行っていることを示している。マシンビジョンや写真測量の分野では、写真を3次元計測する技術があり、Googleのエンジニアにそのような技術を持っている人がいてもおかしくない。

この技術の今後の展開としては、Google Earthの建物の3次元形状の壁面にこのストリートビューの撮影した写真が利用できる可能性がある。車の位置とカメラの向きが分かっているので、建物形状の3次元のデータがあれば、ストリートビューで撮影して、建物壁面の部分を抽出し、建物形状の3次元データと関連付けることができれば、墓石のような建物の3次元形状データの壁面に窓や壁面の色を入れることが可能となる。

これまでのエントリーでは、Quantum GISを使って地図画像に位置情報を与え、Google Earthに表示させた。今回は応用編として、自然災害の被害範囲を地図化したハザードマップを重ねてみることにしよう。

ハザードマップは市町村ごとに公開している。もちろん、作っていない場合や公開していない場合もある。まず、お住まいの市町村のホームページに公開されているか確認してみよう。私は現在、流山市南流山駅あたりに住んでいるので、流山市で探してみたところ、洪水ハザードマップが公開されていることがわかった。

流山市洪水ハザードマップ
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/section/kasen/hazardmap/index.html

PDFで公開されている場合が多く、今までの方法を行う場合は、画像化する必要がある。Irfanviewでは、プラグインをインストールするとPDFを画像ファイルとして保存できる。

保存した画像をこれまで紹介してきた方法で位置情報を与える。問題はどの投影法なのかという点だが、建物の区画が明確に含まれているので、1/2500都市計画図であると判断し、世界測地系第9系とした。イメージオーバーレイまで完成した写真を以下に示す。

bv.jpg

濃い青色は、江戸川が氾濫した場合に数メートル浸水する可能性があると記載されている。ちなみに、南流山駅は2.5mから5mが浸水可能性があるとのこと。そうなると、江戸川を渡って地下に入るつくばエクスプレスは、水没して不通になることは容易に想像できる。次に、少し拡大してみよう。

bv2.jpg

地形を強調表示している。黄色のあたりは0.5m以下か、浸水しないと予想されている。その場所は、地形がやや高まっていることがわかる。このように、地形と予想される被害の対応関係も理解することができる。

ハザードマップは役所のウェブサイトで公開されている場合が多い。自分の住んでいる場所はどのような自然災害が起こりうるのか、調べてみるのも良いだろう。今回は、洪水ハザードマップとしてが、地震に関するハザードマップも公開されている場合があるので、同じ方法で重ねてみても良いだろう。そうすることで、自分がどれくらい自然災害による被害を受けるリスクがあるのか、想像できるのではないだろうか。

さらに重要なのが、ハザードマップを用いて自分がどのようにこのような自然災害リスクを回避するべきか、ということを考えることである。今回のような洪水の場合は、被害が小さいと予想される場所はなぜそのようになっているのかを、Google Earthの3次元表現によって明確に理解できたわけだが、それによって江戸川が氾濫した場合に逃げる場所を容易に想定することができるようになる。さらに、避難所などの災害時に役に立ちそうな情報が地図上にレイヤーとしてプロットされていれば、避難のための想定が容易にできるようになるだろう。

こういうハザードマップが、Google Earthとかウェブ上の地図で容易に表示できるような仕組ができれば、防災にも少しは役に立つうだろうと思うのである。

だいぶ前のエントリーになってしまったが、Quantum GISを使って、画像に位置情報を与え、それを投影変換する方法を紹介した。今回は、投影変換した地図画像をGoogle Earthに重ねてみたい。

前提として、地図画像が等緯度経度に変換されている必要がある(前回までのエントリ参照)。前回、25000分の1地形図を等緯度経度の投影法に変換したので、これをそのまま利用する。まずは、この投影変換した画像の情報を見てみよう、gdalinfoコマンドを以下のように実行する。

gdalinfo <前回出力した等緯度経度の画像ファイル>

すると、以下のように出力される。

Driver: GTiff/GeoTIFF
Files: test3.tif
Size is 10241, 6803
Coordinate System is:
GEOGCS["Marshall Islands 1960",
DATUM["Marshall_Islands_1960",
SPHEROID["Hough 1960",6378270,296.9999999999916,
AUTHORITY["EPSG","7053"]],
AUTHORITY["EPSG","6732"]],
PRIMEM["Greenwich",0],
UNIT["degree",0.0174532925199433],
AUTHORITY["EPSG","4732"]]
Origin = (139.863881043749930,35.933958579062747)
Pixel Size = (0.000016353913445,-0.000016353913445)
Metadata:
AREA_OR_POINT=Area
Image Structure Metadata:
INTERLEAVE=BAND
Corner Coordinates:
Upper Left ( 139.8638810, 35.9339586) (139d51'49.97"E, 35d56'2.25"N)
Lower Left ( 139.8638810, 35.8227029) (139d51'49.97"E, 35d49'21.73"N)
Upper Right ( 140.0313615, 35.9339586) (140d 1'52.90"E, 35d56'2.25"N)
Lower Right ( 140.0313615, 35.8227029) (140d 1'52.90"E, 35d49'21.73"N)
Center ( 139.9476213, 35.8783307) (139d56'51.44"E, 35d52'41.99"N)

もう少し文字列が続くが、この文字列のCorner Coordinatesが重要なのである。Upper Left、Lower Left、Upper Right、Lower Rightの値が、地図画像の四隅の緯度経度をあらわしている。この情報が重要となる。以下はUpper Leftを示す。

Upper Left ( 139.8638810, 35.9339586) (139d51'49.97"E, 35d56'2.25"N)

Upper Leftは左上ということであり、 ( 139.8638810, 35.9339586)は経度、緯度の10進数表示であり、 (139d51'49.97"E, 35d56'2.25"N)は経度、緯度の度分秒表示となっている。

次にGoogle Earthにうつる。上記出力画像は、JPEGにした方が良い。TIFFやPNGはうまく表示されないことがあったので。さて、Google Earthを起動し、追加>イメージオーバーレイを選ぶ。そして、リンクの部分でJPEG画像を選ぶようにする。そして場所タブをクリックしする。そうすると、東西南北それぞれに緯度または経度が入力できるようになる。

tab.jpg

表示に沿って、北にはgdalinfoで表示させたUpper LeftまたはUpper Rightの緯度を入れる。ここで注意すべきことは、度分秒表記で入力することである。gdalinfoでは、度分秒表記を35d56'2.25"Nとしているが、Google Earthは35°56'2.25"Nとしている。違いがお分かりだろうか。これは、度にあたるdと°が違うのだ。なので、Google Earthに入力した後に、すぐにdを°に変換してやる必要があるのだ。そして、南はLower LeftまたはLower Rightの緯度を入力する。西にはLower LeftまたはUpper Leftの経度を入力し、東にはLower RightまたはUpper Rightの経度を入力する。そしてOKをクリックすると、Google Earth上には、航空写真とぴったりと重なるように、地図がオーバーレイできているはずである。

overlay.jpg

次は応用編ということで、ハザードマップのオーバーレイを行ってみたいと思う。

自分の行ってきた研究を,多くの人に平易な言葉で説明できるようにしたいと考えている。それは,研究成果の社会還元のために重要だと考えたからである。つい最近出版された自分の論文を紹介したいと思う。

  1. やったことを一文で説明すると・・・
  2. 「これまで撮りためてきた航空写真(空中写真)を使って,過去40年間の森林の変化や成長が再現できることが明らかになった。」

  3. 航空写真(空中写真)について
  4. 航空写真は,地図作りの目的のために,日本全国を戦後から定期的(森林域ではほぼ5年おき)に撮影してきた。そのため,航空写真は膨大な枚数の蓄積がある。この蓄積を生かすことできれば,新しい情報を生み出せる可能性がある。このような視点で航空写真を使うことはほとんどなかった。

  5. 航空写真を使って立体視
  6. 航空写真は,先ほど書いたように地図作成を目的として撮影されている。そのため,等高線が必要であり,地形のデコボコを把握するために立体視ができるように撮影される。立体視とは,写真のような2次元の画像を複数枚使うことで,物を3次元(立体的)に見る方法である。そのため,同じ地点でも複数の航空写真で写るように撮影されている。

  7. 樹木の凸凹の変化だけ抽出
  8. 森林や山の中を撮影した航空写真を使って立体視をすると,どんな凹凸が見えるだろうか。それは,「地形+樹木」の凹凸である。樹木は,成長すると上に高くなっていく。つまり,同じ森林で,40年前に撮影された航空写真の凹凸と,最近撮影された航空写真の凹凸を比較すれば,地形の凹凸が変化していないとするならば,樹木の成長による凹凸の違い,要するに樹木が高くなっていくことが把握できるはずだ。

    fig1.jpg

  9. 樹木の凹凸を抽出
  10. 航空写真から,地図作成のために立体視をしてきたが,人の手によって行われてきた。しかし,これでは時間がかかる。最近では,コンピュータの発達や,この分野の発展により,半自動的に凹凸が抽出できる技術が確立しつつある。そのため,この技術を使って,8時期約40年間の航空写真を50枚以上使い,8時期の凹凸を抽出した。そして,地形の凹凸である地盤高のデータを使って,樹木の凹凸のみを抽出した。この樹高の凹凸の時系列変化を観察することで,森林の変化が把握できるのかを調べてみた。

  11. どんな結果が得られたか?
  12. 最新の航空写真については,最新の測量技術であるレーザ測量の凹凸と比較して,樹木の凹凸は樹木の高さが十分に抽出できていることが確認された。

    そして,8時期の樹木の凹凸を観察したところ,樹木の成長が把握できた。また,樹種や地形による成長の違いが把握できた。他にも,伐採されたところや,植林された所が把握できたり,倒れた被害の発生したところが,凹凸で表現されていた。

    以下に樹木の凹凸を地図化したマップを示す。黒いほど樹木の高さが低く,白いほど高いことを示している。1960年代や1970年代は,南側は黒っぽいことがわかる。ちょうどこの頃に,植林が活発に行われ,その後は順調に成長していることがわかる。

    fig2.jpg

  13. どんないいことがあるの?
  14. 樹木の凹凸として樹木の高さが分かれば,林業を行っている森林では,木材の体積を知ることが重要であるが,これを時間変化として知ることができる。これまでも,森林のこのような情報を自治体が把握してきたが,精度に問題があるという指摘があった。そのため,航空写真を使えば,人間の調査が行けなかった場所でも,今回抽出できた情報を使うことで,精度を高められる可能性がある。また,伐採とか植林の確認もでき,倒木箇所の把握もできるので,森林管理の効率化に貢献できることが期待できる。

    また,バイオマスや貯蔵されている炭素の量が分かるようになる。そして,時間変化がわかるので,その情報を使って,森林の将来の森林の予測を行うこともできる。そうなれば,温室効果気体である二酸化炭素の吸収量の予測や,炭素の貯蔵量の予測も高精度に行える可能性がある。

  15. 掲載論文
  16. 田口仁,遠藤貴宏,古川邦明,沢田治雄,安岡善文,(2009)「多時期の空中写真から作成したDigital Canopy Modelによる森林キャノピーのモニタリング」写真測量とリモートセンシング, Vol. 48, No. 1, pp. 4-11.


というわけで,自分の研究成果を分かりやすく説明することを試みた。正直なところ,どんな書き方が良いのか模索している段階である。今後,いろいろと研究成果を発表していくと思うので,試行錯誤しながら,行ってきた研究を誰もが理解できる形で紹介できるようにしていきたいと思っている。