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ハイチ大地震の際に、Google Earthでの公開をはじめ、地図画像の国際標準形式であるWMS(Web Map Service)で配信されたことを以前のエントリで紹介したが、WMS配信された後の動向を追いつつ、今回の事例をまとめてみたい。

前回のエントリで紹介しているが、参加型マッピングの世界的プロジェクトである、OpenStreetMap(OSM)ではこれを使ったマッピングが盛んに行われた。GeoeyeやDigitalGlobeだけでなく、他の機関もWMSで航空写真や衛星画像を公開した。一応、私の所属する防災科学技術研究所でもJAXAの協力により、ALOS(陸域観測衛星「だいち」)の緊急観測画像をWMSで公開し、微力ながらOSMに貢献した(リンクプレスリリースPDF)。

時間が経過するにつれて、WMS配信されるデータが増えて、それに伴ってハイチの地図が充実し、被害の把握が進んだ。この作成されたマップは、OSMにおいてデータとして公開され、また、WMSによって配信された。OpenStreetMap WikiProject Haitiを見ると、作成された地図や被害マップが活用された事例が多数紹介されている。

さらに注目すべきことに、様々なマップおよびマッピングサービスの下敷きに活用されただけでなく、データそのものを利用したマッシュアップサービスが登場した。経路探索サービス(リンク)、現場の要望をマッピングするサービス(リンク)、携帯端末でのデータの利用(リンク)などが登場した。このように、衛星画像を使って、被害把握から現場対応支援までが迅速かつシームレスに繋がったのである。

上記のように今回の一連のハイチでの事例を振り返ってみると、個人的には2つのポイントがあったと考えている。それは、1)WMSにようなデータが利活用システム側で動的に利用できる方式(分散相互運用環境)が役に立ったこと、2)参加型マッピングがマップ版クラウドソーシングだったこと、の2点である。

1)については、WMS配信されなければ、そもそもOSMによって被災地の迅速なマッピングが実現しなかった。さらに、マッピングされたデータは、WMS配信やデータとして公開されたことにより、現場対応支援までが迅速かつシームレスに実現した。従って、公開するデータが利活用システム側で動的に利用できる方式に対応することの有効性は明らかである。2)については、ウェブのトレンドになりつつあるクラウドソーシングそのものといえよう。

そして、これら2つのポイントは、同時に実現したことで効果が出たといえる。1)の相互運用方式によって衛星画像がWMS配信されることで、利用システム側でデータが動的に利用できるようになったことで、2)のクラウドソーシングとして参加型マッピングが容易に実現したのである。なお、GISドメインとしては、Googchildが2007年に、Volunteered Geographic Informationと名づけた(リンク)。

このようなアプローチの課題として、マッピングのデータの精度がある。ただし、精度の問題は、マッピングを行っている多くの人が問題意識を持っている点であり、バグをチェックするシステム(リンク)や、第三者が管理する仕組が登場した(リンク)。データそのものを公開したり、相互運用で配信することで、データに直接アクセスできるため、精度改善のための仕組もユーザ側で自律的に発案されるのである。ただし、精度の種類のうち、位置の精度については、ユーザサイドに起因するエラーではないため、改善するのは難しい。衛星画像の提供側の課題である。提供する際は位置精度が高いことが要求される。

というわけでまとめると、タイトルで示したように、今回の事例はマップ版クラウドソーシングが実現したわけで、その下支えとしてWMSのような動的にデータが利活用できる相互運用方式が役に立ったといえ、大規模災害時の情報収集手段として、この組み合わせによって、民間会社や専門家が作成するマップの網羅性や迅速性を超えるマップができ、さらに、新たな利活用が生まれるポテンシャルがあることが明らかになったといえる。利用ポリシーをどうするのかという点は課題だが、今後も大規模な災害が発生した際は、データの所有者はWMSで提供することを強く希望したい。

ただし、このやりかたは世界のどこでも有効だろうか?ハイチのような地図もほとんど無い場所だったから今回の参加型マッピングが有効だったが、もう少し発展した国で役に立つアプローチだろうか?地震の規模と被害の規模によるが、この点は考えておく必要があるだろう。

(本エントリを書くにあたり、臼田裕一郎氏(@usuyu)が収集した情報を多数利用している。本エントリは、臼田氏との共著という位置付けとしたい。)

昨日のエントリで、Google Earthでハイチの被災地を撮影した商用の高解像度衛星画像が公開されていることを紹介したが、WMSで公開されていることがわかった。これはインパクトが大きい。

この大地震によって、地図関係の大きな動きとしては、OpenStreetMapの活発な活動が挙げられる。OpenStreetMapは参加型で地図を作成するプロジェクトである。今回のハイチの大地震により、世界各地の人々から、あらゆる情報を使い、ハイチの地図の作成が行われている。当初は、Landsatなどの中解像度の衛星画像が活用されていたのだが、とうとう商業用の高解像度衛星画像が活用されるようになった。

これらの衛星画像は、これまで紹介してきた国際的に標準的な地図画像のやりとりの方式あるWMS(Web Mapping Service)が利用されているのだ。これによって、公開するだけでOpenStreetMapで活用できるようになったのである。もちろん、WMSなので、Google EarthやQuantum GISなどの他のクライアントでも表示可能である。Quantum GISでのWMSの利用方法 はこちら、Google EarthでのWMSの利用はこちらを参照されたい。

WMSの情報は、WikiProject Haitiに示されている。以下に各衛星画像のCapabilitiesのURLを示す。

・DigitalGlobe
http://maps.geography.uc.edu/cgi-bin/mapserv?map=/home/cgn/public_html/maps/mapfiles/haiti.map&version=1.1.0&SERVICE=WMS&REQUEST=GetCapabilities
地震前と後の写真がある。ただし、地震後の写真は白黒のようだ。

・Geoeye
http://maps.nypl.org/relief/maps/wms/32?request=GetCapabilities
地震後のカラー写真がある。

これらの写真を使い、被害調査が行われている。写真で判読であるため、制約があることは否めないが、倒れた建物、倒れそうな建物、通れない建物、倒壊した橋などもマッピングされている。また、国連の要請で、難民キャンプを求められているらしい。(リンク

OpenStreerMapにログインし、ハイチの画像を見ると、情報がどんどん追加されているのがわかる。

最新の情報なのかわからないが、OpenStreetMapのWMSが公開されており、そこで追加されている情報を見ることができる。

OSM WMS Service
http://vizure.net/support/blog/item/1-osm-wms-service

上記のWMSのCapabilities
http://data1.vizure.net/server/services/osm.xml

このような規模で、参加型によって、衛星画像を活用して災害調査が行われた事例は、はじめてではないだろうか。これを実現できたのは、WMSなどの相互運用技術が広まってきたからである。

インド洋の大津波の際は、高解像度衛星画像によって、津波の様子や渦を撮影し、そのインパクトが世界に伝わった。5年が経過し、今度は見るだけでなく、衛星画像を使うところまで、到達したといえる。非常に感慨深いものがある。衛星画像の利用の新しいパラダイムシフトが起きた瞬間かもしれない。

ハイチ地震の全容が次第に明らかになってきている。それと同時に、衛星観測によるデータが出てきている。1月14日夜の時点で確認できているのが、日本のJAXAのALOS(だいち)、アメリカの商用衛星Geoeyeの画像である。色々な面で違いが分かりやすいので紹介する。

1. ALOS(だいち)

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるハイチ地震にともなう緊急観測
http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/img_up/jdis_av2_haiti_100114.htm

一部の拡大画像が紹介されている。2時期の画像の比較から、被害が起きたところは白くなっているということらしい。上記のデータが国際災害チャーターへ利用されている。

国際災害チャーター
http://www.disasterscharter.org/activation_details

衛星写真地図が公開されている。ただし、高解像度版の画像は公開されていないらしい。

だいちは、AVNIR-2の10m解像度による観測である。ポインティング角度が-26度なので、直下視しか撮影できないPRISM(白黒画像だが2.5m解像度と高解像度)との同時撮影はできない。そのため、擬似的に高解像度の衛星画像(パンシャープン画像)が作成できない。

また、被害が起きたところは白くなっているということだが、ポインティング角度が大きいことと(反射角度)、比季節が異なる点(太陽高度角)から、白イコール被害箇所という解釈は慎重になる必要があるかもしれない。ただし、一般的には倒壊箇所は白っぽくなるといわれている(屋根が崩壊せずに倒壊した場合は、白っぽくならないため、判読が難しい場合がある)。

2. Geoeye

Haiti imagery layer now available
http://google-latlong.blogspot.com/2010/01/haiti-imagery-layer-now-available.html

以前からGeoeyeとGoogleは連携が密である。それを利用して、GoogleがGeoeyeの衛星画像が閲覧できるKMLファイルを公開した。このファイルをGoogle Earthに表示させ、被災前の高解像度衛星画像との比較もできるようになっている。

この写真の解像度は、画像の圧縮が影響していて判断できないが、1mから数mのオーダーの解像度ではないだろうか。撮影範囲はかなり広い。判読してみると、建物ごとに倒壊の度合いが分かる。しかし、上から見ているために、崩壊しているのか判別しづらい部分もある。

3.考察

JAXAのだいちは、国際チャーターで一番早く画像を提供したが、画像ファイルであり、しかも解像度なりの詳細さをもった閲覧ができない。一方、GoogleとGeoeyeでは、Geoeyeが撮影した衛星写真をGoogle Earthという世界的に有名なソフトウェアにより、地理情報として、その写真が持つ解像度なりの表示を実現し、世界中の人が被災状況を見ることができる機会を提供した。

だいちとGeoeyeには衛星センサとしての差は歴然としている。これはGeoeyeの方が新しいわけで仕方ない。とはいえ、衛星画像の品質が全く同じだったと仮定しても、どちらが使える衛星写真を提供しているといえるだろうか?


個人の考えであるが、災害等の緊急時においては、だいちの画像は、圧縮せずに地図と重なる形式(つまり地理空間情報)で公開するべきである。つまり、以前から当Blogで取り上げているようなWMS(Web Mapping Service)による公開を行うべきである。そうすることで、衛星画像にアクセスできる人が増え、衛星画像が役に立つデータとなる可能性がある。なお、WMS形式はGoogle Earthにも表示できる。

誰がユーザーかによって、公開方法は異なるだろう。しかし、衛星画像は地図であり、たくさんの人と共有すべきデータに近い。これからは、衛星センサのみを見るのではなく、どう衛星画像を使われるのかを考え、現在の情報技術に対応した衛星画像の情報流通のデザインを考えていく必要があるだろう。

久々にマスメディアの記事に反応してみる。光学センサによる人工衛星の画像の問題点を報じた記事である。こういう記事が出てきたのははじめてではないだろうか。

不法投棄人工衛星で監  視界不良(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hyogo/news/20091022-OYT8T01274.htm

後を絶たない廃棄物の不法投棄に対し、人工衛星から撮影した写真で投棄現場をキャッチしようという試みが今年度、各地の県民局で続いている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)から購入した写真をもとに各県民局で分析し、山間部など地上パトロールの盲点になりやすい場所への投棄を発見する狙い。ただ、衛星写真の限界もあり、成果はまだ見えてこないようだ。

(中略)

しかし、これまでに発見に至った投棄現場はゼロ。県環境整備課によると「衛星が県上空を通る時に雲がかかっていると、場所によっては地表が見えない」。さらに「衛星通過は年に8度。年4回の写真購入はあくまで予定」という。

 淡路県民局でも調査員2人が分析。投棄ごみを特定できるほど鮮明でなく、環境課は「廃棄物処理場の位置や過去に投棄があった場所など、データを蓄積しながら試行錯誤中」とする。調査員も、衛星写真とは別に、投棄の可能性がある場所を見定めて歩くことが多く、上空監視の威力が表れるまでにはまだ時間がかかりそうだ。

人工衛星の問題点として、この記事からは1)画像の解像度の問題、2)1年間に限られた回数しか撮影できない問題、3)雲がかかって見えない場合がある問題、が挙げられている。実務で使う上での問題点が網羅されているといえる。

1)画像の解像度の問題についてだが、だいちの解像度は2.5mとはいえ、これは白黒画像のみの解像度である。カラー画像の場合は10mの解像度である。擬似的に2.5mのカラー画像を作成することは可能だが、不法投棄の規模にもよるが、経験的にも判読するのが難しいケースも多い。

2)1年間に限られた回数しか撮影されない問題についてだが、年に8度というのは、ほぼ真上を通る回数である。衛星センサ(場合によっては衛星自体)を傾けることが可能なため、実はずっと多い回数の撮影が可能である。災害時などの緊急撮影の場合は、だいちでは2日以内に撮影するようにすることが可能である。しかし、2日以内というのは衛星には負担がかかり、他の撮影スケジュールとの兼ね合いとなるので、そう頻度高く撮影することは難しいだろう。

3)の雲の問題についてだが、結局は晴天率次第で、特に快晴率次第である。冬の太平洋側は晴れていることが多いので、撮影可能なケースは多いが、雲が多い梅雨から秋前のシーズンはチャンスが少ない。運の部分も大きい。2)との関連で、撮影回数が多くなれば、それだけ雲の影響を受けない日に撮影できるチャンスはある。

これらの問題を解決するためには、ひとつの人工衛星の画像データを使うことに固執しないことである。つまり、目的に応じて、解像度や時期が適した、様々な人工衛星画像を入手し、利用することが重要である。現状は、処理やコストの問題など、様々な課題があるが、人工衛星の画像を実務で使えるデータとするためには、このような利用イメージを容易に実現できるかにかかっているのではないだろうか。

最新の写真測量技術を使って、建物の3次元モデルを参加型で作成する試みがGoogleからはじまったので試してみた。豆腐のような壁面が無い3次元モデルではなく、壁面付きの3次元モデルが簡単に作成できる。

Googleビルディングメーカーでは、斜め写真などの大量の航空写真(空中写真)を使い、その写真から建物の3次元構造(輪郭線)がどのようになっているのかを、マウスを使って教えてあげるだけである。これらの航空写真を撮影したカメラは、どこでどの向きで撮影したのかは撮影時点で計測しているので、複数の写真で、特定の建物がどういう輪郭線であるのかをインプットすることで、建物の輪郭線が現実世界の3次元地理座標と対応をとることが可能となる。それによって、3次元モデルが作成可能となる。

以下が、建物の輪郭線が写真でどのように表現されているのかを示している様子である。直方体だけでなく、屋根のような形状との組み合わせも可能である。

zu1.png

このシステムでは、6枚から8枚くらいの航空写真を利用しているが、写真の枚数が多くなればなるほど、その3次元モデルの位置や高さの情報の誤差が少なくなる(もちろん、ユーザ次第で精度は変わるが、致命的なミスは減る)。また、斜め写真ということで、建物壁面の画像を切り出して、3次元モデルに貼り付けることが可能となる点が大きい。通常の地図作成の場合は、2枚の写真による立体視なので、壁面が写っていない場合も多いが、斜め写真を使うことで、その問題は解決する。

以下が、完成した3次元モデルである。かなりいい加減に作ったが、それっぽい表現になっていることがわかる。

zu2.png

斜め写真を複数撮影し、写真測量を行う技術としては、アメリカのピクトメトリー社という航空測量会社が国際航業と提携したことが知られている(リンク)。Googleがこの企業の技術を用いたかどうかは不明だが、この方法と大差無いだろう。

これにより、コストと時間をかけて正確な3次元モデルを作るアプローチ(従来型)と、質は劣るが大量にそれっぽい3次元モデルをユーザが作るアプローチ(参加型)の2種類によって3次元モデルが作成可能となったわけである。2つのアプローチを併用しつつ、広範囲で3次元の地球がサイバースペースで再現できるように、うまく進めて欲しいものである。

GDALのプログラム群のひとつである、gdalwarpを使うと、ラスター型(メッシュ)のGISデータの接合が簡単にできるので自分へのメモを兼ねて紹介したい。

国土地理院の基盤地図情報ASTER GDEMなどで公開されている地盤高データ(Digital Elevation Model; DEM)は、タイル状に分割されて公開されている。そのため、境界部を対象にする場合や、広域な利用を考える場合は、データを接合する必要がある。

基盤地図情報については、以前のエントリでラスター型GISデータへ変換できることを紹介した。先日公開がはじまったASTER GDEMはGeotiff形式のラスター型GISデータとして公開されている。これらのデータは、GDALのgdalwarpを使うことで、簡単に接合処理ができてしまう。

gdalwarp ファイル1 ファイル2 出力ファイル

ファイル1とファイル2をつなぎ合わせたものが出力ファイルに保存される。大量のファイルの場合は、アスタリスク"*"を使いワイルドカードによって大量のファイルを指定することができれば、大量のタイル状のファイルを接合することができる。つまり、

gdalwarp ワイルドカード付きのファイル 出力ファイル

とすることで、大量のタイルを接合することが可能となる。

今回、基盤地図情報の10mのDEMを以前エントリの方法でラスター型GISデータへ変換し、gdalwarpで接合した。以下に接合後のファイルを示した。

dem.jpg

Google Earth 5.0がリリースされた。一番の目玉がGoogle Oceanといわれるように,海底地形や海に関するコンテンツが充実したことである。その辺は,多くの方々が取り上げるだろうから,このエントリーでは特に言及しない。私が注目したいのが,過去の航空写真や衛星写真が表示される機能が搭載されたことである。

過去のデータに注目してきた私としては,今回の機能に注目している。これまでの過去の地図や航空写真関連のエントリは以下のとおりである。
明治時代の「迅速測図」がウェブで公開
goo地図に昭和38年の空中写真が登場
Yahoo! Japanによる昭和30年代の地図の閲覧サービス
横浜市の1/3000地形図がkmlで公開

さて,実際に見てみることにする。Google Earth 5.0をインストールして起動すると,メニューアイコンのところに,時計のようなアイコンがある。そこをクリックすると,スライダが登場し,過去の航空写真や衛星写真が切り替え可能となる。

ge_menu.jpg

試しに,東京23区で表示してみよう。
まずは,1997年から。23区内は高解像度なものに整備されている。周囲の画像は,解像度が粗い衛星画像であると考えられ,未整備と解釈できる。

1997.jpg

2002年。新しいデータがある部分は,新しい画像に更新されている。

2002.jpg

2005年。表示範囲の全域は,高解像度の画像となっている。

2005.jpg

2007年。画像の色が変わっている部分があり,更新されているところがあることが分かる。

2007.jpg

次に,ミッドタウンを拡大してみよう。以前は防衛庁本庁舎檜町庁舎だった。そこを更地にし,建築されていく様子がわかる。なお,以下の画像の日付は,Google Earthの左下に表示されていたものである。年までしか表示されていないものは空中写真,月日まで表示されているものは衛星写真だろうか。

midtown.jpg

地図や衛星写真は最新のデータであるという暗黙の了解があるが,データの新鮮さを意識できる意味で,時系列を意識させるこの機能は重要である。今回のようなな航空写真や衛星写真だけでなく,あらゆる地図や位置情報が,過去にさかのぼることが可能な形で公開されることを希望したい。

前回のエントリでは,Quantum GISを用いて基盤地図情報25000を表示するところまで行った。今回は,別のWMSの地図を表示することを試みたい。なお,前回のエントリの方法で表示したJGD2000の投影法で,新宿副都心付近を表示したところから説明を進めることにする。

使用する地図は,いわゆる地図ではなく航空写真である。つまり,写真地図である。業界では空中写真と呼んでいる。今回,国土交通省のオルソ化空中写真ダウンロードシステムを使用する。このサービスでは,空中写真の地図をWMSで配信するサービスである。「オルソ」の意味は,地図と重なる形で,空中写真が幾何的な補正がされた写真のことである(正射投影されたということ)。これからは,このような写真地図をオルソ空中写真と呼ぶことにする。

このサービスのサイト上でも,オルソ空中写真を見ることが可能だが,Quantum GISを使用すると,他のGISデータと重ねることができるため,今後有用となる可能性がある。

このサービスの提供範囲は,こちらに示されている。昭和50年前後は広域にカバーされているが,そのほかの年代は,残念ながら都心のみに限られている。今後拡大するかもしれない。

Quantum GISのメニューにて,「レイヤ > Add WMS Layerを」選択する。「Add Layer(s) from a Server」というウィンドウが表示される。そして,Server Connectionsの中の「新規」ボタンをクリックする。そして,出てくるウィンドウに以下のように入力する。

  • 名称 オルソ空中写真
  • URL http://orthophoto.mlit.go.jp:8888/wms/service/wmsRasterTileMap?

「Add Layer(s) from a Server」に戻るので,Server Connectionsの上側の項目を,「オルソ空中写真」とする。そして,「Connect」をクリックする。すると,以下に示すような表示になる。

quantum_wms1.jpg

「レイヤ」のところに,4つのリストが表示されるのがわかるだろう。これは,提供範囲で示したオルソ空中写真の撮影時期に対応している。ID,名称は次のように対応している。

  • ID: 1 ORTHO → 第1期(昭和49年~昭和53年)撮影分
  • ID: 2 ORTHO01 → 第2期(昭和54年~昭和58年)撮影分
  • ID: 3 ORTHO02 → 第3期(昭和59年~昭和61年)撮影分
  • ID: 4 ORTHO03 → 第4期(昭和62年~平成 2年)撮影分

リストのうち,ID1だけクリックして,色を反転させてみよう。そして,「Add」をクリックすると,WMSの画像がダウンロードされ,オルソ空中写真がオーバーレイされる。これによって,第1期のオルソ空中写真が表示された。

quantum_wms2.jpg

上記画面の左側には,表示されたデータの項目が示されている。そこにある「オルソ空中写真」の左の「×」をクリックし,チェックをはずしてみよう。すると,先ほどの基盤地図25000が表示される。そして,また同じ「×」をクリックすると,オルソ空中写真が表示される。つまり,これは基盤地図25000の上に,オルソ空中写真が重なって表示されているのだ。そして,この左側のデータの項目は,上ほど優先的に表示されるのである。

表示を何度か切り替えてみると,基盤地図とオルソ空中写真がほぼぴったり重なっていることがわかる。昭和50年代は,新宿副都心の高層ビル群は,まだ立てられていないビルがあることが見て分かり,興味深い。

先ほどの左側の項目のところにある,「オルソ空中写真」をダブルクリックし,ラスタレイヤプロパティを表示させる。そして,「一般」タブをクリックし,表示名を「第1期(昭和49年~昭和53年)撮影分」としておこう。

さらにオルソ空中写真を追加していこう。再び「レイヤ > Add WMS Layerを」選択し,「Add Layer(s) from a Server」ウィンドウで「オルソ空中写真」を選択して,Connectする。そして,ID 2のみをクリックして色を反転させて,Addをクリック。すると,同じように第2期(昭和54年~昭和58年)撮影分が表示されるようになる。これを,先ほどと同様にラスタレイヤプロパティにて表示名を「第2期(昭和54年~昭和58年)撮影分」としよう。

上記の作業を,第3期,第4期と繰り返してみよう。すると以下のように,4時期のオルソ空中写真が表示される環境が整う。

quantum_wms3.jpg

左側の項目の「×」の切り替えによって,表示を切り替えてみよう。副都心の高層ビル群の見え方の違いや,空き地だったのが高層ビル群に変わったりと,さまざまな変化が観察でき,非常におもしろい。

今回のエントリで,WMSを表示する方法がなんとなく分かっていただけたと思う。次のエントリでは,Quantum GISで表示できる他のWMSを紹介したい。

追記:歴史的農業環境閲覧システムにはWMSはないのかな・・・。

米国のロックバンドであるレディオヘッドのプロモーションビデオ(以下PV)に,レーザーを使った最新の測量技術が使用されているようだ。

レディオヘッドが「ライトもカメラも使わない」実写ビデオ公開 (IT media)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0807/15/news026.html

通常のビデオ撮影にはカメラとライトを使うものだが、このビデオクリップでは、レーザー光線による3Dスキャンを行い、収集した3Dデータからビデオ化した。  米Velodyneのレーザースキャナ装置により、64本のレーザー光線が1分間に900回、360度にわたってスキャンし、そのデータを米Geometric Informaticsが3D化した。

ビデオはGoogleの以下のサイトにて,PVとメイキングビデオの2本の動画が公開されている。

RA DIOHEA_D / HOU SE OF_C ARDS
http://code.google.com/creative/radiohead/

このようなレーザースキャナー装置は,主に斜面や構造物の詳細な3次元形状を測量するために用いられる。地上型レーザースキャナ,または地上型レーザ測量と呼ばれる。地上だけでなく,航空機に搭載するレーザースキャナーもある(私は航空機のほうのレーザスキャナを用いた研究を行っている)。

仕組みとしては,レーザースキャナ装置から,1秒間に数千発のレーザーがパルスとなって周辺にたくさん照射される。そのパルスが地物に反射して装置まで戻ってくる時間を計測し,時間から遠近を把握する。そして,各パルスがどの角度や方向に照射されたのかを把握しておく。そうすることで,装置からレーザーが照射可能な範囲において,詳細な3次元形状が再現できるのだ。

さらに,ずっと装置からパルスを照射し続けてデータを取得し,動画のように見せているところが非常に興味深い。特にPVの最初のあたりで顔の形状が表現されているところである。測量では,同じ対象を長時間にわたってパルスを照射することあまりないだろう。というのも,動くものは測量の対象とはならないからである。ほかにも,装置自身をぶれさせて移動させて取得した形状を乱れさせたり,水の膜を用意してパルスを反射させなくしたりと,測量での用途では考えられない使い方をして遊んでいることも,とても興味深い。

レーザースキャナー装置の用途して主流になるとは考えられないが,こういう使い方を着想する柔軟さや,目の付け所の良さに感心する次第である。

最も国民の認知度の高い衛星である気象衛星「ひまわり」の後継機の予算を確保する見通しが立っていないらしい。

気象衛星が消滅の危機、「ひまわり」後継機に予算集まらず(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080705-OYT1T00454.htm

気象庁が6~8年後に打ち上げを予定している気象衛星「ひまわり」後継機2基の調達の見通しが立たず、30年以上も日本の空を宇宙から見守ってきた気象衛星が消えてしまうかもしれない事態に直面している。

現行2基の予算の7割を分担した国土交通省航空局が計画から外れることになったため、管理運用を含め1基400億円とされる予算の確保が気象庁だけでは難しいためだ。

以前,気象庁が考えている次期気象衛星についてエントリを書いた。やや批判気味に書いたのだが,民間の力を利用するという考えだったので,気象庁には予算が無いということは良くわかっていた。そして,本当に予算が確保できていないようだ。

以下に,いくつかの雑感を列挙する。

(1) 気象衛星は最も役に立った地球観測衛星である

一機400億円かかるとか,予算が取れる取れないは別にして,これまでの地球観測衛星の中で気象衛星はも最も役に立ってきた地球観測衛星の1つである。日本では,気象衛星の打ち上げ前は台風の接近の予想は富士山レーダー(1999年廃止)に頼るしかなかったが,気象衛星によって,はるか南の台風の発生をいち早く察知し,台風の進路の予測の精度が向上した。防災面での貢献は多大なものがある。

それだけでなく,数値予報へのインプットデータとしての貢献,気象現象の解釈にも使用される。世界的には,世界気象機関(WMO)が実施している世界気象監視計画へ参加しており,国際貢献にもなっている。

(2) 極軌道衛星は気象衛星の代替にはならない

最近は,だいち(ALOS)や,高分解能衛星写真を目にする機会が多くなっている。しかし,このような画像を撮影する衛星は極軌道である。気象衛星は静止軌道であるため,観測方法が全く異なっている。極軌道の場合は,地球の回りを回っているため,気象衛星のように一時間や30分に1度のような高頻度の撮影はできない。

(3) このタイミングには何か裏がある?

国の予算のことは詳しく知らないが,All aboutによると,来年度の予算の動きが始まるのが5月くらいのようだ。

概算要求、補正予算、復活折衝・・専門用語を解説! 予算についての基礎知識 (All about)
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20010904/index.htm

各省庁の各局の各「課」が、来年欲しい予算をまとめ、各局の予算関係を仕切る「総務課」に要求します。これが5月末くらいまで。総務課はこれをもとに局の予算要求をまとめ、各省庁の予算関係を仕切る「官房予算関係課(会計課)」に提出します。これは6月末くらいまで。これをもとに、各省庁が予算の要求を財務省にするのが8月末から9月あたまくらいまでです(これを概算要求といいます)。

この記事によると,5月から6月にかけては省庁内で予算要求が決まってくる時期である。気象庁は外局なので国土交通省との予算の関係がよくわからないが,国土交通省内での折衝か,財務省での折衝でうまくいっていないのだろうか。そのため,リークによる先制攻撃で予算獲得を有利に進める狙いがあるのかもしれない。洞爺湖サミットの主要テーマの1つに気候変動があるので,この記事が出るタイミングが良すぎる。

まさか,気象衛星が必要ないと考えている役人はいないと思う(そうあってほしい)ので,何か裏があるような気がしている。

(4) とにかく気象庁はこれから正念場

過去のひまわりの打ち上げの経緯を見ると,技術試験衛星であったり,運輸多目的衛星だったりと,現業では衛星画像自体は使われているが,単独で現業を目的とした気象衛星の打ち上げについては,行われていないのだ。

ひまわり8号に迫る危機 (MTSAT打ち上げを追う!)
http://mtsat.air-nifty.com/news/2008/02/8_0464.html

* ひまわり1号~2号:科学技術試験衛星だったため、科学技術庁が経費を100%負担(気象庁ゼロ%) * ひまわり3号~5号:科学技術衛星だっため、科学技術庁が40-25%負担(気象庁60-75%) * ひまわり6号~7号:運輸多目的衛星だったため、航空局が70%負担(気象庁30%)

今後の衛星は,国土交通省航空局が計画から外れ,技術試験衛星でもないということである。つまり,現業として気象庁が継続性を持って気象衛星を打ち上げる時期が訪れた,という解釈ができる。いろいろと水面下の攻防がありそうだが,とにかく気象庁は正念場を迎えているといえる。