研究の最近のブログ記事

FOSS4G Advent Calendar 2011に参加したので久々にブログ更新(26日担当)。ここは個人のブログですが、現在、自分が「仕事で」開発を担当しているWebGIS「eコミマップ」を紹介したいと思います。(このエントリは「です」「ます」調。)

1. eコミマップの概要
背景とか理念とか書き出すと文章長くなって時間も無いので省略しますが、eコミマップは防災科研が開発しているオープンソースのWebGISです。FOSS4Gのプログラム群を基盤に機能を拡張して作っています(一番基盤となっているのがGeoserverで、PostGISとかOpenLayersとか、いろいろ使っています)。ライセンスはGPLで無償公開しています。なので、特に申請なども必要なく、商業利用も可能です。ダウンロードはこちらから。

特徴は、OGCのオープンスタンダードで公開されている地理空間情報の流通の仕組み(WMSやGoogleのKMLなど)に基づきデータを取得して重ねて表示することができ、そして、それらを下敷きに自分で情報を登録して地図が作成して印刷出力ができ、作った地図をさらにOGCオープンスタンダードの方式で二次配信できます。

開発して3年ちょっとで、これまで開発した機能を数えたことはありませんが、ざっと以下のような機能があります。

・外部の地図データ(WMS、KML、TMS系など)表示機能
・情報登録機能(写真やドキュメントの張り付けも可能)、登録情報管理機能
・住所によるジオコーディングを使った情報登録機能
・IDとパスワードによるレイヤとマップの管理機能
・印刷機能(PDF出力機能)
・空間および属性検索機能、空間分析機能(一部のみ)
・メモ描画機能
・携帯電話、スマートフォンによる閲覧および情報登録機能

マップのみのウェブサイトですと、多目的に使いづらいので、CMSやグループウェアとの連携を念頭に置いています。防災科研ではeコミグループウェアというPHPベースのグループウェアを開発しており、グループウェアのユーザ権限の連携が可能です。(ちなみに、DrupalやWordpressと連携するためのAPIおよびパーツの開発を今年度行っています。)

防災科研なので、これらの機能を使って、防災マップの作成や災害対応に活用してもらいたいと思っています。ただ、このシステムは用途はかなり汎用的なものですので、環境とか防犯とかいろいろなことに使えます。

2. 導入事例
平時の防災活動といしては防災マップコンテストを開催し、そこでeコミマップを使いました。2010年度のコンテストの作品は公開しています。eコミグループウェアからeコミマップを呼び出して使っています。

東日本大震災では情報集約および恊働を呼びかけるために構築したALL311において、各機関が公開している地図のマッシュアップに使用しました。日本地理学会が津波被災マップの公開のためにeコミマップを使いました

また、宮城県社会福祉協議会がeコミを使ってボランティアセンターのサイトを運営し、ボラセン運営のために一部非公開で地図を活用しています。詳しくは私が災害情報学会で発表したスライドをご覧ください。

さらに、東日本大震災で被災した自治体(陸前高田市と大槌町)については、罹災証明書の発行を支援しました。また、釜石市ではがれきの撤去管理支援にも活用されました。これらについては、地理情報システム学会で発表したスライドをご覧ください。

こんなこともあって、eコミマップは地理情報システム学会の学会賞(ソフトウェア部門)を受賞しました。また、宮城県社会福祉協議会からは表彰を受けました

3. 導入のためには?
ソフトウェアは無償なので、あとは以下のことを考える必要があるでしょう。

a. サーバ環境
Redhat系で動作確認しています。なので、CentOSが入っているさくらのVPSで動くと思います(人柱募集)。推奨はメモリ4GB以上なので、月々4000円のコースでしょうか。なお、eコミマップは中に複数のサイトを構築し、外部の複数のサイトと連携できるので、それほどたくさん環境構築する必要はないことが特徴です。

b. セットアップやメンテナンス
セットアップはマニュアルがありますが、バージョンアップなども考えると、Linuxがわかるシステム管理者を置いてサーバ管理ができる必要があるでしょう。ただ、地図管理画面が充実しているので、インストール後の運用はGISが分かっているサイト管理者がいれば、問題はないです。実際のユーザは管理画面を使わずにeコミマップを使用できるようにしています。

c. 背景となる地図は?
例えば、基盤地図情報25000WMS配信サービスが使えるでしょう。歴史に興味が有る方は、農環研さんの迅速測図も使用できますね。負荷が心配ですが...。さらに、現在開発中(年明け公開予定)なのですが、Googleマップを背景に使えるようにします。ただし、地図タイルのリクエスト数の多さによる課金の心配がありますし、印刷制限があります。他には、OpenStreetMapのタイル方式にも対応させる予定です。噂によると、来年度は国土地理院が電子国土の地図画像をほぼ標準的なタイル形式で公開するらしいので、それにも対応させたいと思っています。

4. 今後の開発予定は?
年明け公開準備しているのが、Shapeファイルのアップロードおよびダウロード機能があります。また、これまでは緯度経度の投影だったのですが、Googleマップで使用されているメルカトルに対応させます。それに伴い、すでに言及したようにGoogleマップとOpenStreetMapを背景地図に使用できるようになります。

別システムなのですが、Javaで動くデスクトップアプリケーション「eコミマップ印刷アプリ」を1月末までに公開する予定です。eコミマップから出力された専用ファイルを読み込みませることで、地図上に画像やメモ、吹き出しや矢印などが自由に配置できるようにします。

来年春にはeコミマップと他のウェブシステムを連携するためのAPI機能を実装して公開する予定です。先ほどDrupalとの連携について触れましたが、ユーザ認証やレイヤの管理や更新などAPIで行えるようにし、他のウェブシステムが連携しやすくします。また、iframeによる地図埋め込み機能もできるので、他のサイトにおいてブログパーツのようにeコミマップを使用できるようにします。

来年夏ころかもしれませんが、オフラインでeコミマップが使用できるする機能を公開予定です。Live DVDみたいなものが配布してハンズオンができればいいなあと思っていますが・・・。

5. 将来的なこと
eコミマップを広く普及させることはあまり興味が有りませんが、このオープンソースであることをうまく社会で活かして欲しいと考えています。最近の動きですと、NPOのDoChubuさんでは、eコミマップを使って防災マップなど地図作製の支援を事業として開始しました。朝日新聞にも紹介されています

長期的な展望はusuyu氏にお任せするとします。広い視野で展望できる時間的・精神的な余裕が全くありませんので。そうそう、国際展開のための多言語対応は必要ですね。

6. 目指すべきは地図データを互いに利用できる環境「分散相互運用環境」の実現

GoogleマップやGoogle Earthに代表されるように、GISは徐々に浸透してきていますが、様々な地図を簡単に重ね合わせたり、マッシュアップさせられる環境にはほど遠い状況です。その理由は、地図データが他の地図システムで活用しやすい方法で公開されていないからです。理想は、地図データを持つ機関が、責任を持って地図データを標準的な方式でインターネットで公開して、利用者はそれらをうまく重ね合わせてマッシュアップできる環境です。このことを「分散相互運用環境」といいます。技術的にはできていますが、社会の仕組みとして、これができていません。

東日本大震災では、被災後の国と民間の航空写真をWMSで公開し、ITS協会が公開していた通行実績マップのKMLをマッシュアップさせ、さらにゼンリン住宅地図や炊き出しマップや避難所マップ、津波被害エリアマップ(by 日本地理学会)などの地図データを重ね合わせることができる分散相互運用環境をeコミマップで実現させ、被災地で実際にボランティアセンターなどがeコミマップを活用して、災害対応に活用していました。現実には、このようなGISを活用できる環境は簡単に実現できないのが現状です。

Googleも被災後の衛星画像と通行実績マップをマッシュアップさせていましたが、これはGoogleのエンジニアがやらないといけない作業でした。このようなことは、本来はユーザ側で動的にできる必要があります。また、そのマッシュアップした地図の上にユーザが自分の情報を登録できる環境はありませんでした。我々はそれができるようにする必要があるのです。

7. さいごに
結局、勢いで背景とか理念の一部を最後に書いてしまいましたが、eコミマップは分散相互運用環境を実現するために生まれた地図ツールなのですね。永遠に開発途中のシステムです。もし、よければ使ってやってください。あと、開発者は随時募集中ですので、興味のある方はご連絡ください。

阪神淡路大震災から15年ということもあり、地震関係の話題をよく目にする。流行もので大変恐縮だが、Twitterに代表されるソーシャルメディアが地震防災研究に貢献できる可能性について考えてみたいと思う。ここで「地震防災研究」としているのは、実際に地震防災に役に立つ手段なのかが明らかにされておらず、有効性を評価するための研究が必要だからである。しかし、以下の2つの項目に記した文章から分かるように、研究ができる下地は整っており、地震防災研究へ貢献できる可能性は十分にあるといえる。


・地震予知の研究にソーシャルメディアは使える?

毎日新聞のサイトで以下のような記事を発見した。

地震:異常現象を予知に生かそう 関西の産学が本腰(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20100106k0000e040069000c.html

空が赤く光るといった地震前の非日常的現象の情報を集め、地震予知に生かそうという取り組みが今月から始まる。科学では分からない「未科学」の部分を解き明かそうという試みで、「関西サイエンス・フォーラム」(会長=秋山喜久・関西電力相談役)が計画した。京都大や大阪大などの地震や気象、生物等の研究者約30人が参加、一般からの情報も募る。

国は、このようなタイプの研究は行わない立場であるが、大学などの研究機関がこういう研究を行うことは意義がある。「未科学」という言葉が新鮮である。さて、この研究を意味のあるものにするためには、異常現象である可能性がある情報を数多く収集することである。当然のことながら、モバイル端末や携帯電話による一般からの情報は、重要なウェイトを占めるだろう。

こういうものこそTwitterのようなソーシャルメディアが活用できる。タグ付けして写真を撮影するなり文章を、簡単な住所と共にTweetすればよい。iPhoneならTwitterクライアントであれば、自動的に位置情報をつけることもできる。大きな地震がいつ起きるか分からないため、情報を募る期間が読めないという問題点はあるが、上記の方式で情報を収集するコストは、プラットフォームができているので、ほとんどかからないため、やってみる価値はあるのではないだろうか。


・被害などの情報の集約にソーシャルメディアは使える?

アメリカでは、USGS(地質調査所)が、Twitterで地震の情報を収集できるかどうか研究を行っているというニュースを発見した。

アメリカ地質調査所,ツイッターを活用した地震情報収集システムを実験(メディア・パブ)
http://zen.seesaa.net/article/137775957.html

アメリカ地質調査所はこれまでも世界各地で頻発している地震を速報しており,RSSフィードでも時系列で配信している。世界中の限りあるセンサーからのデータをもとに地震発生地を検知していた。ところがこのTED( Twitter Earthquake Detection)では,これまで違って人によるコメントや写真などの情報が地球上のあらゆる場所から集められる。 "earthquake"とか"tremor"のようなキーワードを含むツイートを収集していけば,膨大な情報が集まるようになるだろう。2008年7月の南カリフォルニア地方で起こった地震では,携帯電話の通話が滞ることがあったが,SMSやモバイルアプリ経由のツイッターがかなり使われたという。緊急時のコミュニケーションツールとしてもツイッターは定着していきそうだ。

報道機関や行政機関などは、被害の迅速な把握が必要だが、ソーシャルメディアによって蓄積される情報が役に立つ可能性がある。ノイズが多いことが予想されるが、位置情報が付与され、地震に関するキーワードで検索するなり、決められた(どのように決めるのかは課題)ハッシュタグを付けることで、必要な情報を抽出できる可能性が高い。

大地震が発生すると通信網が遮断される可能性があるため、このような仕組みがうまく働くのかは未知数である。ただ、前述したように、このような可能性を明らかにするための研究にかかる費用は、すでにTwitterなどのプラットフォームはできているため、少なくて済むのである。大きな地震は発生して欲しくないのだが、大地震のような大規模災害が発生した際には、ソーシャルメディアの可能性および有効性を評価してみたいと思ったりしている。

先月の3月23日に学位記授与式が行われ,博士課程を修了しました。学位は博士(工学)です。学位記はこちらです。

2009年度からは独立行政法人防災科学技術研究所で,契約研究員として勤務します。所属は防災システムセンター 災害リスク情報プラットフォームプロジェクトです。

当サイトやブログで発言してきた位置情報を中心とした内容は,研究プロジェクトにも生かせる部分があると考えています。研究内容については,今後少しずつ紹介できればと思っています。


さて,話が変わりますが,職場がつくばなので,これを機に一人暮らしを始めました。住まいはつくばエクスプレスの南流山駅の近くです。そして,生活を荒んだものにしないために,生活日誌を付け始めました。

tagchanの生活日誌
http://d.hatena.ne.jp/tagchan/

なお,当サイトとブログは,引き続き同じテーマ+防災・災害関連で続けていくことになると思います。


学生生活から社会人生活へと移り,研究者としての人生が新たにスタートしました。研究者の道はけもの道であり,今後どういう人生を歩むのかは分かりません。ですが,しっかりとやっていければ,次の道は必ず開けると信じています。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

自分の行ってきた研究を,多くの人に平易な言葉で説明できるようにしたいと考えている。それは,研究成果の社会還元のために重要だと考えたからである。つい最近出版された自分の論文を紹介したいと思う。

  1. やったことを一文で説明すると・・・
  2. 「これまで撮りためてきた航空写真(空中写真)を使って,過去40年間の森林の変化や成長が再現できることが明らかになった。」

  3. 航空写真(空中写真)について
  4. 航空写真は,地図作りの目的のために,日本全国を戦後から定期的(森林域ではほぼ5年おき)に撮影してきた。そのため,航空写真は膨大な枚数の蓄積がある。この蓄積を生かすことできれば,新しい情報を生み出せる可能性がある。このような視点で航空写真を使うことはほとんどなかった。

  5. 航空写真を使って立体視
  6. 航空写真は,先ほど書いたように地図作成を目的として撮影されている。そのため,等高線が必要であり,地形のデコボコを把握するために立体視ができるように撮影される。立体視とは,写真のような2次元の画像を複数枚使うことで,物を3次元(立体的)に見る方法である。そのため,同じ地点でも複数の航空写真で写るように撮影されている。

  7. 樹木の凸凹の変化だけ抽出
  8. 森林や山の中を撮影した航空写真を使って立体視をすると,どんな凹凸が見えるだろうか。それは,「地形+樹木」の凹凸である。樹木は,成長すると上に高くなっていく。つまり,同じ森林で,40年前に撮影された航空写真の凹凸と,最近撮影された航空写真の凹凸を比較すれば,地形の凹凸が変化していないとするならば,樹木の成長による凹凸の違い,要するに樹木が高くなっていくことが把握できるはずだ。

    fig1.jpg

  9. 樹木の凹凸を抽出
  10. 航空写真から,地図作成のために立体視をしてきたが,人の手によって行われてきた。しかし,これでは時間がかかる。最近では,コンピュータの発達や,この分野の発展により,半自動的に凹凸が抽出できる技術が確立しつつある。そのため,この技術を使って,8時期約40年間の航空写真を50枚以上使い,8時期の凹凸を抽出した。そして,地形の凹凸である地盤高のデータを使って,樹木の凹凸のみを抽出した。この樹高の凹凸の時系列変化を観察することで,森林の変化が把握できるのかを調べてみた。

  11. どんな結果が得られたか?
  12. 最新の航空写真については,最新の測量技術であるレーザ測量の凹凸と比較して,樹木の凹凸は樹木の高さが十分に抽出できていることが確認された。

    そして,8時期の樹木の凹凸を観察したところ,樹木の成長が把握できた。また,樹種や地形による成長の違いが把握できた。他にも,伐採されたところや,植林された所が把握できたり,倒れた被害の発生したところが,凹凸で表現されていた。

    以下に樹木の凹凸を地図化したマップを示す。黒いほど樹木の高さが低く,白いほど高いことを示している。1960年代や1970年代は,南側は黒っぽいことがわかる。ちょうどこの頃に,植林が活発に行われ,その後は順調に成長していることがわかる。

    fig2.jpg

  13. どんないいことがあるの?
  14. 樹木の凹凸として樹木の高さが分かれば,林業を行っている森林では,木材の体積を知ることが重要であるが,これを時間変化として知ることができる。これまでも,森林のこのような情報を自治体が把握してきたが,精度に問題があるという指摘があった。そのため,航空写真を使えば,人間の調査が行けなかった場所でも,今回抽出できた情報を使うことで,精度を高められる可能性がある。また,伐採とか植林の確認もでき,倒木箇所の把握もできるので,森林管理の効率化に貢献できることが期待できる。

    また,バイオマスや貯蔵されている炭素の量が分かるようになる。そして,時間変化がわかるので,その情報を使って,森林の将来の森林の予測を行うこともできる。そうなれば,温室効果気体である二酸化炭素の吸収量の予測や,炭素の貯蔵量の予測も高精度に行える可能性がある。

  15. 掲載論文
  16. 田口仁,遠藤貴宏,古川邦明,沢田治雄,安岡善文,(2009)「多時期の空中写真から作成したDigital Canopy Modelによる森林キャノピーのモニタリング」写真測量とリモートセンシング, Vol. 48, No. 1, pp. 4-11.


というわけで,自分の研究成果を分かりやすく説明することを試みた。正直なところ,どんな書き方が良いのか模索している段階である。今後,いろいろと研究成果を発表していくと思うので,試行錯誤しながら,行ってきた研究を誰もが理解できる形で紹介できるようにしていきたいと思っている。